金沢大学において特別講座を実施
2018.01.24
「自動運転の法的な課題」について古笛恵子弁護士が講義
日本損害保険協会北陸支部(委員長:吉持 敏彦・三井住友海上火災保険株式会社 理事北陸本部長)では、2011年度から金沢大学で連続講座を開講しています。
このたび、2018年1月17日(水)に「自動運転の法的な課題」をテーマに特別講座を実施しました。
金沢大学は石川県珠洲市における公道走行の自動運転の実証実験を行うプロジェクトの中心となっていることもあり、「保険論」を履修している学生以外にも開放して講義を行いました。
講義の概要は以下のとおりです。
講義概要
自動運転技術の進展に伴い、システムの欠陥や障害による事故も想定され、運行供用者やドライバーの責任だけでなく、システムや自動車メーカーなどシステムの責任が問われる。
国土交通省の「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」では、自動運転自動車による事故の損害賠償制度のあり方について次のような検討を行っている。
1.システムの欠陥による事故の損害について
現時点では、従来の運行供用者責任を維持しつつ、保険会社等から自動車メーカーに対する求償権行使の実効性確保のための仕組みを検討する案が有力であるが、次のような課題がある。
・保険会社が自動車の欠陥を立証したり、求償権を行使することは、実質的に可能か。
・無保険の場合、運行供用者から自動車メーカーへの求償権行使は難しいのではないか。
2.システムの欠陥がない場合(サイバーテロなど)
現在の盗難車による事故と同様な状況であると想定すれば、政府保障事業において対応することができるか等を検討する。
3.その他
運行供用者、運転者の受傷事故:任意保険での対応
物損事故:製造物責任法(自動車メーカー)、民法(販売店)での対応
自動運転に関する法律は全世界で議論されている。ドイツでは運行供用者責任を中心に改正案が検討され、アメリカではPL法を中心に改正案が議論されている。日本では技術革新が先行しており、法律面の議論は遅れている。今、この分野を研究すればパイオニアになれるので、興味を持って考えてほしい。