「第11次京都府交通安全計画(中間案)」に意見表明
2021.08.11
交通安全思想の普及徹底および無電柱化の推進等を要望
日本損害保険協会近畿支部(委員長:藤原 剛・三井住友海上火災保険株式会社常務執行役員 関西本部長)では、京都府が令和3年7月2日(金)~令和3年7月21日(水)の間に実施した「第11次京都府交通安全計画(中間案)」に関するパブリック・コメント(意見募集)に対し、桑田 周一 京都損保会会長(三井住友海上火災保険株式会社理事京都支店長)名で意見表明を行いました。
本計画は、国(中央交通安全対策会議)が策定した「交通安全基本計画」に基づき、令和3年度から7年度までの陸上交通の安全に関する総合的かつ長期的な対策の大綱として定めるものです(概要は以下のとおり)。
「第11次京都府交通安全計画(中間案)」の概要
- 1.道路交通の安全(抜粋)
(1)交通事故のない社会を目指して
(2)人優先の交通安全思想
(3)高齢化が進展しても安全に移動できる社会の構築
第1章 道路交通の安全
- 第1節 道路交通事故のない社会を目指して(基本的考え方)
(1)道路交通事故のない社会を目指して、(2)歩行者の安全確保、
(3)地域の実情を踏まえた施策の推進、(4)役割分担と連携強化、
(5)交通事故被害者等の参加・協働 - 第2節 道路交通の安全についての目標
- ・令和7年までに、年間の24時間死者数を40人以下、重傷者数を700人以下、とすることを目指す
- 第3節 道路交通の安全についての対策
- Ⅰ 今後の道路交通安全対策を考える視点
(1)高齢者及び子供の安全確保、(2)歩行者及び自転車の安全確保と遵法意識の向上、
(3)生活道路における安全確保、(4)先端技術の活用推進、
(5)交通実態等を踏まえたきめ細かな対策の推進、(6)地域が一体となった交通安全対策の推進 - Ⅱ 講じようとする施策
- (1)道路交通環境の整備、(2)交通安全思想の普及徹底、(3)安全運転の確保、
(4)車両の安全性の確保、(5)道路交通秩序の維持、(6)救助・救急活動の充実、
(7)被害者支援の充実と推進、(8)調査研究の充実
これに対し、京都損保会では、以下8点の意見表明を行っています。
意見内容
<意見1>
自転車における損害賠償保険に関し、P.11、P.28、P.38、P.43に記載のある「自転車損害保険等への加入促進」という旨の文言について、「京都府自転車の安全な利用の促進に関する条例」では同保険の加入が義務付けられていることから、「自転車損害賠償保険等への加入義務の徹底」など、府民に適切なメッセージが伝わる表現にしたほうがよいと考えます。
また、自転車損害賠償保険等への加入について、加入義務徹底の実効性を高める観点や、確実に府民へメッセージを伝える観点から、「(1)自動車損害賠償保障制度の充実等」(P.43)と並列の形で、「(2)自転車損害賠償責任保険等への加入義務の徹底等」などの表題で新たに項目化し、本件に関して記載いただくことを検討願います。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅰ、(2)「歩行者及び自転車の安全確保と遵法意識の向上」(P.11)、
第1章、第3節、Ⅱ、2、(3)ウ「自転車の安全利用の推進」(P.28)および4、(3)「自転車の安全性の確保」(P.38)、・7「被害者支援の充実と推進」(P.42)
<意見2>
交通事故の危険性が高い特定の箇所・区間の指定にあたっては、直近の交通事故の発生状況や多数の人身事故が毎年常態的に発生している箇所を考慮する等、柔軟な対応をお願いします。
当協会では、毎年秋に、都道府県別の事故多発交差点マップ(人身事故の多い交差点のマップ)を公表し注意喚起を行っております。交通安全に関する調査研究および推進、事故危険箇所の指定にあたって、参考にしていただければ幸いです。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、1、(3)「幹線道路における交通安全対策の推進」(P.14)、(4)「交通安全施設等の整備事業の推進」(P.16)および8「調査研究の充実」(P.44)について
<意見3>
高齢ドライバーによる事故が社会的に問題視される中、本計画の第1章、第3節、Ⅱ、1、(5)「高齢者等の移動手段の確保・充実」(P.17)では、「地域住民の移動手段の確保」が記載されておりますが、これを十分に行うのが困難な地域、またはこれに相当の時間を要する地域もあるかと存じます。
したがって、当面は「サポカー・サポカーS」(P.12)や「運転者の危険認知の遅れや運転操作の誤りによる事故を未然に防止するための安全運転を支援するシステム」(P.12)の普及促進、およびこれらの購入を希望する高齢ドライバーへの国の補助金制度の周知徹底なども必要と考えます。
具体的には、「(5)高齢者等の移動手段の確保・充実」(P.17)に上述について追記いただき、また、「カ 高齢者に対する交通安全教育の推進」(P.26)および「オ 高齢運転者対策の充実」(P.32)に上述について普及・周知することを追記してはいかがでしょうか。
「Ⅰ.今後の道路交通安全対策を考える視点」には「高齢者が運転する場合の…身体機能の衰え等を補う技術の活用・普及…」(P.10)とある一方、「Ⅱ.講じようとする施策」には本件に関する高齢者に向けた記載がないため、その観点でも上述について記載する必要があると考えます。
【該当箇所】第2章、第3節、Ⅱ、1、(5)「高齢者等の移動手段の確保・充実」(P.17)および2、(1)カ「高齢者に対する交通安全教育の推進」(P.26)、3、(1)オ「高齢運転者対策の充実」(P.32)について
<意見4>
無電柱化は、安全で快適な通行空間の確保に資するだけでなく、災害時の緊急車両の通行空間確保につながり、災害被害の低減や復旧復興の迅速化にも大きく寄与します。「京都府無電柱化推進計画」に基づき取組みを進めているところと承知しておりますが、これらの観点も踏まえ、1.0%(平成29年度末)前後に止まっている無電柱化率の早期引上げに向け、積極的に推進いただくようお願いします。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、1、(7)「無電柱化の推進」(P.18)
<意見5>
「段階的かつ体系的な交通安全教育の推進」に賛同します。特に小学生、中学生、高校生は移動手段として自転車を利用するケースが多いため、自転車事故を未然に防ぐための自転車等の交通安全教育が第一義と考えますが、自転車事故の加害者となった際には、極めて重大な責任を負う可能性もあることから、成人を含めてその責任への対処法等についても教育することは、「被害者支援の充実と推進」(P.42)の観点からも重要と考えます。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、2、(1)「段階的かつ体系的な交通安全教育の推進」(P.24)について
<意見6>
自転車損害賠償保険等の加入義務化や成年年齢の引き下げにより、高校在学中あるいは卒業後すぐに保険契約者となる機会が到来すること等を踏まえると、高校の授業における体系的な学びが必要です。このため、以下のように記載を追加し明確化する必要があると考えます。
「…生徒の多くが,近い将来,普通免許を取得することが予想されることから,強制保険である自動車損害賠償責任保険や任意の自動車保険の必要性を含め,運転免許取得前の教育としての性格を重視した交通安全教育を行う。」
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、2、(1)、エ「高校生に対する交通安全教育の推進」(P.25)について
<意見7>
当協会では、交通安全教育に関する講演会・勉強会・研修会等への講師の派遣事業、年齢層に応じた教育テキスト・動画の作成・提供を行っております(⇒損保協会HP:そんぽ学習ナビ)。交通安全教育の推進にあたっては、当協会として積極的に協力します。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、2、(2)「効果的な交通安全教育の推進」(P.27)および(4)「交通の安全に関する民間団体等の主体的活動の推進」(P.31)
<意見8>
交通事故に係る保険金詐欺は、反社会的勢力等の資金源となることがあるため、「イ 交通事故事件等に係る捜査力の強化」(P.39)に記載いただいたとおり、交通事故事件等の捜査力の強化は引き続き注力をお願いしたいと存じます。この間、警察本部のご指導・ご協力のもと、不正請求排除に向けた各種取組みを行っておりますが、刑法犯罪の多様化・巧妙化に伴い、交通事故事件等に従事する捜査要員が減少傾向にあるとうかがっており、高度化・巧妙化し立件することが困難な交通事故事件捜査の要員の拡充、専従捜査体制の強化を要望いたします。当協会では、今後も警察本部のご指導のもと、犯罪撲滅に向けて協力していきたいと考えております。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、5、(2)「交通事故事件等に係る適正かつ緻密な捜査の一層の推進」(P.39)
京都損保会では、今後も行政や関係機関と協力し、地域の安全・安心に資する取り組みを推進します。