「第11次奈良県交通安全計画(案)」に意見表明
2021.06.22
交通安全思想の普及徹底および被害者支援の充実と推進等を要望
日本損害保険協会近畿支部(委員長:大野 博仁・東京海上日動火災保険株式会社専務取締役〔代表取締役〕)では、奈良県が令和3年5月7日(金)~令和3年6月6日(日)の間に実施した「第11次奈良県交通安全計画(案)」に関するパブリック・コメント(意見募集)に対し、横澤 雄三 奈良損保会会長(東京海上日動火災保険株式会社奈良支店長)名で意見表明を行いました。
本計画は、交通安全対策基本法第25条第1項の規定に基づくものであり、奈良県が令和3年度から令和7年度までの5年間に講ずべき交通安全に関する施策の大綱を定めるもので、概要は以下のとおりです。
第11次奈良県交通安全計画(案)」の概要
第1章 道路交通の安全(抜粋)
- 1.基本理念
(1)交通事故のない奈良県を目指して
(2)人優先の交通安全思想
(3)高齢化が進退しても安全に移動できる社会の構築 - 2.道路交通の安全についての目標
- (1)令和7年までに交通事故死者数を限りなくゼロに近づける(20人以下を目途)。
- (2)令和7年までに重傷者数を 320 人以下に減少させる。
死者数の減少につなげるため、命に関わり優先度が高い重傷者数の減少を目標とする。 - 3.対策
- <6つの視点>
- (1)高齢者及び子供の安全確保、(2)歩行者及び自転車の安全確保と違法意識の向上、
- (3)生活道路における安全確保、(4)先端技術の活用促進、
- (5)交通実態等を踏まえたきめ細やかな対策の推進、(6)地域が一体となった交通安全対策の推進
- <8つの柱>
- (1)道路交通環境の整備、(2)交通安全思想の普及徹底、(3)安全運転の確保、
- (4)車両の安全性の確保、(5)道路交通秩序の維持、(6)救助・救急活動の充実、
- (7)被害者支援の充実と推進、(8)調査研究の充実
これに対し、奈良損保会では、地域における安全・安心を推進する観点等から、以下8点の意見表明を行っています。
意見内容
意見1
当協会では、毎年秋に、県別の事故多発交差点マップ(人身事故の多い交差点のマップ)を公表しております。事故危険箇所の指定および交通事故低減の調査研究にあたって、参考にしていただければ幸いです。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、1 交通道路環境の整備(P.16~23)および8、(2)道路交通事故原因の総合的な調査研究の充実強化(P.67)
意見2
高齢ドライバーによる事故が社会的に問題視される中、運転免許返納後の移動手段の確保・充実が困難な地域、または相当の時間を要する地域もあると考えており、当面、「サポカー・サポカーS」や踏み間違い防止等事故を未然に防止するための「安全運転を支援するシステム」(P.14)の普及促進が急務であり、これらの購入を希望する高齢ドライバーへの国の補助金制度の周知徹底など、さらに踏み込んだ記載が必要と考えます。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、(5) 高齢者等の移動手段の確保・充実(P.23~24)
意見3
無電柱化は、平時の安全で快適な通行空間の確保に資するだけでなく、災害時の緊急車両の通行空間確保につながり、災害被害の低減や復旧復興の迅速化にも大きく寄与します。これらの観点も踏まえ、無電柱化率の早期引上げに向け、積極的に推進いただくようお願いします。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、1,(7)無電柱化の推進(P.24)
意見4
「心身の発達段階やライフステージに応じた段階的かつ体系的な交通安全教育」を推進することに賛同します。なお、小・中・高校生は移動手段として自転車を利用するケースが多いため、自転車事故を未然に防ぐための交通安全教育が第一義と考えますが、自転車事故の加害者となった際には、極めて重大な責任を負う可能性もあることから、成人を含めてその責任への対処法等について教育することも重要と考えます。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、2 交通安全思想の普及徹底(P.32~38)
意見5
自転車損害賠償責任保険等の加入義務化や成年年齢の引き下げにより、高校在学中あるいは卒業後すぐに保険契約者となる機会が到来すること等を踏まえると、高校の授業における体系的な学びが必要です。このため、以下のように記載を追加し明確化する必要があると考えます。
「…自転車の安全な利用、自転車損害賠償責任保険等の加入義務化(中略)、運転者の責任(中略)等について更に理解を深めるとともに、生徒の多くが,近い将来,普通免許等を取得すること(中略)から,強制保険である自動車損害賠償責任保険や任意の自動車保険の必要性を含め,(中略)交通安全教育を行う。」
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、2,(1)エ 高校生に対する交通安全教育の推進(P.35)
意見6
当協会では、交通安全教育に関して、講演会・勉強会・研修会等への講師の派遣事業、年齢層に応じた教育テキスト・動画の作成・提供を行っております(⇒損保協会ホームページ:そんぽ学習ナビ)。交通安全教育の推進にあたっては、当協会として積極的に協力したいと考えております。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、2,(2)効果的な交通安全教育の推進(P.38)および(4)交通安全に関する民間団体等の主体的活動の推進(P.42)
意見7
交通事故に係る保険金詐欺は、反社会的勢力等の資金源となることがあるため、交通事故事件等の捜査力の強化は引き続き注力をお願いしたいと存じます。高度化・巧妙化し立件することが困難な交通事故事件捜査の要員の拡充、専従捜査体制の強化を要望いたします。当協会では、今後も警察本部のご指導のもと、犯罪撲滅に向けて協力していきたいと考えております。
【該当箇所】第1章、第3節、Ⅱ、5,(2)交通事故事件等に係る適正かつ緻密な捜査の一層の推進(P.57~58)
意見8
P.13等に記載のある「自転車損害賠償責任保険等への加入促進等の対策を推進する。」旨の文言について、奈良県では条例で同保険への加入を義務付けていることから、「~加入義務の徹底を図ります。」など、県民に適切なメッセージが伝わる表現にしたほうがよいと考えます。また、「 (1) 自動車損害賠償保障制度の充実等」(P.63)と並列の形で、「(2)自転車損害賠償責任保険等への加入義務の徹底等」などの表題で新たに項目化し、本件に関して記載いただくことを検討願います。
【該当箇所】主に、第1章、第3節、Ⅱ、7 被害者支援の充実と推進(P.62~63)
奈良損保会では、今後も行政や関係機関と協力し、地域における安全・安心に資する取り組みを継続的に推進していきます。