福岡県自転車活用推進計画(案)に意見表明
2019.01.30
約4割に止まる自転車賠償責任保険の重要性につき、周知協力を要望
一般社団法人日本損害保険協会九州支部(委員長:大久 孝一・損害保険ジャパン日本興亜株式会社 専務執行役員九州本部長)では、福岡県が1月10日(木)~1月23日(水)の間に実施した「福岡県自転車活用推進計画 (案)」に関するパブリック・コメント(意見募集)に対し、大久 九州支部委員会委員長名 で意見表明を行いました。
今回、福岡県は、環境に優しく経済的にも優れ、かつ、健康にも良い「自転車」の利用拡大に向け、国において2017年5月に「自転車活用推進法」が施行され、さらに、2018年6月には国における「自転車活用推進計画」が策定されたことを踏まえ、「福岡県自転車活用推進計画」(2019年度~2021年度)を策定するため、パブコメに付したものです。
■福岡県自転車活用推進計画 (案)の概要
- 1.計画策定の趣旨 - 県(市町村)に地域の実情を踏まえた自転車活用推進計画策定の努力義務
- 2.推進計画の性格 - 自転車活用推進法に基づく「福岡県総合計画」や「福岡県交通ビジョン2017」の部門計画
- 3.計画期間 ー 2019年度~2021年度までの3年間。計画の実施状況や社会情勢を踏まえ見直す。
- 4.他計画との関係 ー 2016年度に策定した「福岡県地球温暖化対策実行計画」では、自動車の使用減により運輸部門の二酸化炭素排出削減に取組む方針
(本県の二酸化炭素排出量の19%を運輸部門が占め、うち85%が自動車を発生源としている)。 - 5.自転車関連事故の状況 -
【全国】
自転車関連の交通事故発生件数は減少傾向。交通事故発生件数全体の約2割を占有。
2016年の自転車乗用中死者数は509人と、前年より63人(約11%)減少したが、法令違反別にみると、自転車側の約8割に何らかの法令違反があり、そのなかでも、「安全不確認(23.9%)」、「運転操作不適(18.3%)」が多い。
【本県】
自転車事故件数は減少傾向だが、自転車乗用中死者数や自転車対歩行者の交通事故は、ほぼ横ばいで推移。法令違反が重大事故につながっている。
【課題】
自転車関係の死亡事故の約59%が頭部を損傷。うち90%がヘルメット非着用。
自転車と歩行者の安全確保を図るための自転車通行空間の整備や自転車に関するルールの周知、自転車安全教育の推進等が課題。
■自転車活用推進計画の施策体系及び具体的な取組み
- 1.自転車活用推進法(2017年度施行)に基づき、国は自転車活用推進計画を策定
(2018年6月、期間は2020年度まで)。 - 2.自転車活用推進のための施策体系 -本県の自転車を取り巻く現状や課題、国の自転車活用推進計画等を踏まえ、長期的視点で実現すべき4つの目標を策定
目標1 自転車を快適に利用できるまちづくり
目標2 自転車を活用したスポーツ活動と健康づくりの推進
目標3 自転車を活用した観光振興と地域の活性化
目標4 自転車・歩行者・自動車が安全に通行する社会づくりの推進 - 3.施策の推進方策 - 市町村との連携、関係機関との連携、成果の検証と新たな施策の検討
これに対し、九州支部委員会では、この間、当協会として、地域における安全・安心を推進する観点から、長らく学校教育活動の中で中学生・高校生を対象に交通安全講話等を通じて交通事故防止活動に取り組んできた点、あるいは、自転車シミュレータや高規格救急車等の機材を寄贈し、直接的に地域の安全・安心に貢献する活動を行っている点を踏まえ、2点の意見表明を行っています。
1.自転車安全教育について
- 「自転車乗用中の死者数」の交通事故死者数全体に占める割合が高い点、あるいは、交通事故総数が大きく減少する中で「自転車対歩行者の交通事故」を大きく減少させられないでいる点については、同じ思いを感じている。また、自転車乗用中の法令違反が重大事故につながっている現状を踏まえ、課題認識に記載されている「自転車安全教育の推進」については、推進強化の必要性を強く感じている。
- 当協会では、「自転車シミュレータ」を自転車安全利用の実践的な教材として、(一財)福岡県交通安全協会をはじめ全国の交通安全協会に寄贈し、啓発に役立ててもらっている。なお、同協会は充実した啓発機材を有しており、これらを活用した教育が有効と考える。また、当協会では、自転車事故の防止に向けた啓発冊子の作成等も行なっており、これらを是非、「自転車安全教育」を推進するうえで役立てていただきたいと考える。
2.自転車損害賠償保険等の加入率引き上げについて
- 当協会は、「福岡県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」の趣旨に賛同している。昨今、自転車加害事故事例においても1億円に迫るような高額の損害賠償判決が出ている現状においては、事故を起こした場合に備えた賠償責任保険への加入の促進は不可欠と考えている。
- 福岡県における賠償責任保険の加入状況が記載のとおり、約4割(2017年度)にとどまっているのが事実であれば、被害者救済に支障を来たす恐れがあり、引き上げは急務かと考える。
- 会員各保険会社は、創意工夫を凝らし、インターネットや携帯電話を通じて、あるいは、コンビニエンスストアーや自転車販売店等の窓口で、さらには全国の交通安全協会等と連携して、自転車加害事故に備える賠償責任保険の提供に努めており、各施策の実施等により、より一層の周知に向けた支援をお願いしたい。
- 当協会では、学校教育現場等での自転車利用に関するルールの周知、自転車加害事故に伴う損害賠償責任あるいは自転車事故に備えた賠償責任保険の加入の必要性の啓発等自転車安全教育に従前より取り組んできており、賠償責任保険等の加入率引き上げについても、当協会として会員保険会社と一体となって、県・県警等関係機関と連携しつつ行なっていく所存。
当支部では、今後も行政や関係機関と協力し、交通事故防止に資する取り組みを継続して推進していきます。