「長崎県総合計画(仮称)」素案に意見表明
2020.10.13
~サポカーや地震保険の普及促進等を長崎県に要望~
一般社団法人日本損害保険協会九州支部長崎損保会(会長:藤本 直季・東京海上日動火災保険株式会社 長崎支店長)では、長崎県が9月16日(水)~10月6日(火)の間に実施した「長崎県総合計画(仮称)」素案に関するパブリック・コメント(意見募集)に対し、藤本 長崎損保会会長名で意見表明を行いました。
本総合計画は、2040年頃にかけて、全国的に人口の減少や少子高齢化など社会の大きな変化が予測されており、長崎県でも全国より速いスピードで人口減少が進行するなど様々な課題が見込まれることから、今から行っておくべき取組を着実に進めていく必要があるとして、長期的な視点で計画的に長崎県づくりを進めていくため、今後の県政運営の指針や考え方を県民にわかりやすく示すために策定されるものです。
≪「長崎県総合計画(仮称)」素案の概要≫
- 1.計画の基本理念 -
・人が活躍し支えあう
・産業が育ち活力を生む
・地域がつながり安心が広がる
人・産業・地域を結び、新たな時代を生き抜く力強い長崎県づくり - 2.計画の構成 -
・計画の策定にあたって
・キャッチフレーズ
・将来ビジョン
計画の基本理念
時代の潮流、今後の10年、本県の課題、本県の強み、本県の近未来像
・政策・戦略
政策展開の基本方向
基本戦略
政策横断プロジェクト
地域別計画
・計画実現に向けた基本姿勢
基本戦略 -
1-1 若者の県内定着、地域で活躍する人材の育成を図る
1-2 移住対策の充実、関係人口の幅広い活用を推進する
1-3 長崎県の未来を創る子ども、郷土を愛する人を育てる
1-4 みんなで支えあう地域を創る
2-1 新しい時代に対応した力強い産業を育てる
2-2 交流人口を拡大し、海外の活力を取り込む
2-3 環境変化に対応し、一次産業を活性化する
3-1 人口減少に対応できる持続可能な地域を創る
3-2 地域の特徴や資源を活かし、夢や希望の持てるまちを創る
3-3 安全安心で快適な地域を創る - 3.政策横断プロジェクト -
1.ながさきしまの創生プロジェクト
2.アジア・国際戦
3.新幹線開業効果拡大プロジェクト
4.健康長寿日本一プロジェクト
5.スマート社会実現プロジェクト
6.人材確保・定着プロジェクト
7.災害から命を守るプロジェクト - 4.計画期間 - 令和3年度~令和7年度(5年間)
※第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略と同じ終期
これに対し、長崎損保会では、長崎県における安全・安心を推進する観点から、以下のとおり意見表明を行っています。
≪意見内容≫
- 基本戦略1-3 長崎県の未来を創る子ども、郷土を愛する人を育てる
長崎県は優れた景観や自然環境の宝庫であるとともに、気象的にも台風が多数上陸するなどの特徴があります。1.ふるさと教育の推進においては、郷土の歴史や伝統文化の理解と同様に、地域の気候や地理の理解を深め、観光や災害に対応する実践的な教育が重要と考えます。従って、指標「地域の発展や地域的課題の解決に向けて児童生徒が探求的な学習を行っている学校数」には郷土の気候や地理の探求的な学習を行う学校も含まれることを確認するとともに、計画に明確に記載いただきたい。
なお、当協会では、文部科学省等からも後援をいただいているぼうさい探検隊マップコンクールプログラムを有しており、必要に応じてふるさと教育推進のために協力させていただきたい。 - 基本戦略2-1 新しい時代に対応した力強い産業を育てる
2.背景 3.生かすべき本県の強み、チャンス、ポテンシャル の5点目「地震、津波が少ないなどBCPとしての適地」については、統計に基づく客観的な事実をPRすることは適当と考えますが、過去に同様のことをうたい、大規模な地震に見舞われた地域もあり、誘致対象企業ばかりではなく県民に対し、将来的に地震等が起こりにくいといった印象を与えかねないことからより慎重な表記にすべきと考えます。
長崎県において、交通事故の発生件数は減少傾向ですが、全事故に占める65歳以上の高齢者による交通事故は増加傾向にあります。
近年、全国的にも高齢ドライバーによる事故が社会的に問題視され免許返納数が増えておりますが、警察庁の運転免許証の自主返納に関するアンケート調査では、高齢者は買い物等の生活のために運転している方が8割近くを占めており、公共交通機関が限られる地域において免許を返納してしまうと、自立した生活を送ることが困難と考えます。
つきましては、高齢ドライバーの事故防止、またP.35基本戦略1-1内の「いつまでも健康で生涯を通じて学び、活躍できる社会の実現」のため、サポカーや踏み間違い防止装置の普及を図るため本計画の指標化を検討いただきたい。 - 基本戦略3-3 施策1 犯罪や交通事故の無い安全・安心なまちづくりの推進
2018年に全国で人身事故数ワースト1となった交差点で信号規制等を変えたところ、事故数が激減したという実例があります。交通事故が複雑な要因により発生することは承知しておりますが、総合的な交通安全対策の推進において、事故が多発している交差点の道路や信号機の改良等の取組みを積極的に検討・実施いただきたい。
また、あわせて歩行者と自転車が分離された通行空間である自転車道等の整備の拡充についても実施いただきたい。
県民が安心に暮らすため、交通事故削減だけでなく交通事故被害者等支援の充実も行っていただきたい。自動車事故はもちろんですが、近年、自転車事故事でも高額賠償請求事案が発生しており、万一の場合の備えとして自転車損害賠償保険への加入促進は不可欠だと考えます。
つきましては、「長崎県自転車活用推進計画」において広報啓発等による損害賠償責任保険などへの加入促進を図ることとなっておりますが、被害者救済の観点から一定以上の強制力を発揮する方針設定を検討いただきたい。 - 基本戦略3-3 施策3 災害に強く、命を守る強靭な地域づくり
1.総合的な防災、危機管理体制の構築 の「防災推進員の養成」は県民の生命・財産を守る対応として当協会も有意義な活動であると考えます。養成講座においては、災害時の防災だけではなく、復旧・復興段階の自助としての保険も取り上げていただいており、当協会としても講師派遣等を通じて引き続き協力いたします。
5.防災減災対策のための国土強靭化の推進 について
長崎県内では、土砂災害警戒区域が土石流に係るもので4,353箇所(土砂災害特別警戒区域4,029箇所)、急傾斜に係るもので24,843 (同24,088箇所)、地すべりに係るもので993箇所(同0箇所)の計30,189箇所(同28,117箇所)が指定されています。(「土砂災害防止法関連データ」(全国治水砂防協会ホームページ掲載2020年3月31日現在)より引用)
今回、国土強靭化を推進していくにあたっては、国の補助制度である「がけ地近接等危険住宅移転事業」の利用を市町村に促し、県としても補助等を行うことで、居住不適地域からの移転支援強化も行っていただきたく、「河川の氾濫防止対策、ダムの整備、土石流対策や地すべり対策、急傾斜崩壊対策施設整備の推進」の一環として同事業実施市町村の拡大に資する施策の実施、利用促進策をご検討いただきたい。 - 災害から命を守るプロジェクト
今回、「命を守る」という観点で記載されておりますが、基本理念の中の「生き抜く力強い長崎県づくり」のためには災害からの復興・復旧を迅速に行う必要があります。生活再建の際、公助の対応には限界があり、経済的な備えとして自助努力も必要です。
自然災害への経済的な備えのうち、長崎県地域防災計画内では、「地震保険に関する法律」に基づき地震災害への経済的な備えとして官民共同で運営されている地震保険を、被災者の生活再建にとって有効な手段の一つと記載いただいておりますが、長崎県の地震保険世帯加入率(2019年度末)は全国ワースト2位で2割を切っております。県民に生活再建の重要性をより認識いただくため、県における更なる地震保険の加入促進策として、地震保険の世帯加入率等の本計画における指標化をご検討いただきたい。
長崎損保会では、今後も行政や関係機関と協力し、地域における安全・安心に資する取り組みを継続して推進していきます。