「熊本県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」 の改正(案)に意見表明
2021.02.11
~自転車損害賠償保険等への加入確認義務化等を要望~
一般社団法人日本損害保険協会九州支部熊本損保会(会長:西村 拓浩・東京海上日動火災保険株式会社 理事・熊本支店長)では、熊本県が2020年12月14日(月)~2021年1月12日(火)の間に実施した「熊本県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」の改正(案)に関するパブリック・コメント(意見募集)に対し、西村 熊本損保会会長名で意見表明を行いました。
近年、全国で自転車による重大な事故が発生しており、熊本県においても被害者が死亡する重大な事故が発生しています。全国の事案の中には加害者に対して高額な賠償金が請求され、損害賠償を填補する保険に加入していなかったことから被害者が損害賠償金の十分な支払を受けられず救済されない事案が少なからず存在しています。
当該条例は、このような状況をなくすためには、自転車の利用によって生じた損害を填補する自転車損害賠償保険等(以下「自転車保険等」という)への加入促進が重要である、といった趣旨を背景に制定されるものです。
≪「熊本県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」の改正(案)の概要≫
- 1.改正の趣旨 -
本県では、掲題自転車条例において、自転車利用者の自転車保険等への加入を努力義務としているが、加入を義務化している自治体と比較すると、本県の自転車保険等の加入率は低い状況にある。
県内の全交通事故に占める自転車事故の割合は近年増加傾向にあり、加えて新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の普及により、今後、自転車利用者の増加も見込まれることから、自転車条例を改正して自転車保険等への加入を義務化し、保険加入率の向上につなげることにより、被害者の経済的救済及び加害者の負う賠償責任によって生じる損害の填補を図り、もって県民の安全・安心なくらしを推進する。 - 2.主な改正内容 -
〇自転車保険等への加入の義務
・自転車利用者(未成年者を除く。)
:自転車を利用する者に自転車保険等への加入を義務付ける。
・保護者
:未成年者の自転車の利用に係る自転車保険等への加入を義務付ける。
・事業者
:事業活動における自転車の利用に係る自転車保険等への加入を義務付ける。
・自転車貸付業者
:貸付けの用に供する自転車の利用に係る自転車保険等への加入を義務付ける。
〇自転車保険等への加入の確認等の努力義務
・自転車小売業者
:販売時に、購入者に対し自転車保険等への加入の有無を確認すること及び未加入の場合に自転車保険等の情報を提供することを努力義務とする。
・事業者
:自転車通勤の従業員に対し自転車保険等への加入の有無を確認すること及び未加入の場合に自転車保険等の情報を提供することを努力義務とする。
・自転車貸付業者
:自転車の借受人に対し加入する自転車保険等の内容に関する情報を提供することを努力義務とする。 - 3.今後のスケジュール -
条例改正案については、県議会令和3年2月定例会へ提案予定。
改正条例の施行日については、改正内容を周知する期間が必要なことから、令和3年(2021年)10月1日を予定。
これに対し、熊本損保会では、自転車関連事故の被害者救済や自転車を利用する上でのリスク啓発の必要性の観点等から、以下4点の意見表明を行っています。
≪意見内容≫
主な改正内容について
- 当協会でも、自転車運転に関するリスクが十分に認識されていない現状において、自転車事故に見舞われた方の被害者救済、また自転車利用者の賠償資力を保持し健全に自転車の利活用を推進する観点から、条例に自転車保険等への加入義務を明記する等、一定以上の強制力を発揮する方針設定が必要と感じており、自転車保険の加入義務化について賛同いたします。
- 自転車通勤の従業者が自転車保険等に加入していない場合、被害者は事業者の使用者責任を訴えることが考えられ、事業者のリスク低減の観点からも加入の確認については努力義務ではなく義務化すべきと考えます。
- 児童等であっても高額の賠償責任を問われかねないことを考えると、現行条例第7条において学校長の責務は「自転車保険等への加入の必要性に関する啓発及び自転車保険等に関する情報の提供」に限られておりますが、より児童等を保護する観点から、学校長に対して「通学で自転車を使用する児童等への自転車保険等の加入有無の確認、未加入者への自転車保険等の情報提供」の努力義務を課すべきと考えます。
また、当協会としては、学校教育現場等での自転車利用に関するルールの周知、自転車加害事故に伴う損害賠償責任に関する知識の啓発あるいは自転車事故に備えた損害賠償責任保険の加入の必要性の啓発等、自転車安全教育の推進に関して、従前より取り組んできておりますが、他の啓発手法の検討を含め、引き続き行政・関係各機関と連携しつつ行っていく所存です。自転車損害賠償責任保険等に関する情報提供などについても、可能な限り加入促進のため協力いたします。
熊本損保会では、今後も行政や関係機関と協力し、交通事故防止に資する取り組みを継続して推進していきます。