「令和3年3月改定版 長崎県国土強靭化地域計画」(素案)に意見表明
2021.02.11
~防災教育の推進やリスク認識の強化などを要望~
一般社団法人日本損害保険協会九州支部長崎損保会(会長:藤本 直季・東京海上日動火災保険株式会社 長崎支店長)では、長崎県が2021年1月15日(金)~2月5日(金)の間に実施した「令和3年3月改定版 長崎県国土強靭化地域計画」(素案)に関するパブリック・コメント(意見募集)に対し、藤本 長崎損保会会長名で意見表明を行いました。
今回の見直しは、令和2年度で本計画期間が終了することに伴い、令和3年度から概ね5年間の長崎県における強靱化に係る施策を計画すること、また、平成30年12月に改定された国の国土強靱化基本計画と調和を図るため、改定内容で必要なものを県地域計画に反映することを目的としており、概要は以下のとおりです。
≪「令和3年3月改定版 長崎県国土強靭化地域計画」(素案)の概要≫
- 1.策定の目的・趣旨 -
・本県が直面する大規模自然災害のリスクを踏まえ、県民の生命、財産を守り、安全な経済社会を構築し、国土強靭化の施策を総合的かつ計画的に推進
・「強くしなやかな国民生活の実現をはかるための防災・減災等に資する国土強靭化基本法」第13条に基づく本県の国土強靭化地域計画として策定 - 2.基本的な考え方 -
〇基本的な姿勢
・インフラの老朽化・耐震対策等の「ハード面」と防災教育の推進等の「ソフト面」の両輪での取組を進める
・国の国土強靭化基本計画と調和し、県の総合計画等と相互補完として機能させる
〇基本目標
1.人命の保護が最大限図られること
2.本県及び地域社会の重要な機能が致命的な障害を受けずに維持されること
3.県民の財産及び公共施設に係る被害の最小化
4.迅速な復旧復興
5.南海トラフ巨大地震に備えた東九州等のバックアップ機能の確保 - 3.脆弱性の評価等の検討 - (下線部は見直し部分)
本県の地勢、気候条件、これまでに被害をもたらした自然災害等の地域特性を踏まえリスクシナリオ(起きてはならない最悪の事態)を設定し、脆弱性の分析、評価、課題の検討を整理
⇒別紙として、リスクシナリオごとの検討、推進方針及び重要業績指標(59)、個別事業(1,245)を記載 - 4.施策分野ごとの推進方針 - (下線部は見直し部分)
〇横断的分野
1.リスクコミュニケーション 2.老朽化対策 3.離島・半島対策 4.南海トラフ巨大地震のバックアップ機能 5.人材育成 6.官民連携
〇個別施策分野
5.行政機能/警察、消防/防災教育等 6.住宅・都市、環境 7.保健医療・福祉 8.産業(通信、エネルギー等) 9.農林水産 10.国土保全・交通(交通・物流) - 5.計画の推進体制 -
計画を総合的、計画的に推進するため、長崎県庁内の推進本部会議や防災会議によりPDCAサイクルをまわす。
改定(令和3年3月)から概ね5年ごとに見直し。
これに対し、長崎損保会では、地域における安全・安心を推進する観点等から、以下5点の意見表明を行っています。
≪意見内容≫
- 該当項目:5.施策分野ごとの推進方針/[横断的分野]/ 5.【人材育成】(P.21)
「防災推進員養成講座の開催およびフォローアップ研修会の開催による地域防災力の維持向上」について、賛同いたします。
- 該当項目:5.施策分野ごとの推進方針/[個別施策分野]/7.【行政機能/警察、消防/防災教育等】/(防災教育等)(P.25)
「継続的で発展的な学校安全に係る取組を進める体制を構築すること」について、賛同いたします。
なお、当協会では、文部科学省等多くの省庁にご後援をいただき、楽しみながらまちにある防災・防犯・交通安全に関する施設や設備などを見て回り、身の回りの安全・安心を考えながらマップにまとめ発表する「ぼうさい探検隊マップコンクール」実施しております。マップ作成にあたっては、子供目線での街歩きの中で大人では気づきにくい危ない場所(子供やお年寄りには逃げにくい避難路など)が見つかり、一部においては政策にも反映していただいていると聞いております。このようなプログラムも参考に、より実践的な防災教育を推進いただければと考えております。 - 該当項目:5.施策分野ごとの推進方針/[個別施策分野]/8.【住宅・都市、環境分野】/(住宅、建築物)(P.25~26)
・「災害ハザードエリアにおける開発抑制、移転の促進、立地適正化計画と防災との連携強化など、安全なまちづくりのための総合的な対策を、市町とともに推進するまた、市町による災害リスクの見える化、建物等の立地に関する制度の活用等、災害リスクの高いエリアにおける立地の抑制及び同エリア外への移転を支援」について、賛同いたします。
・「被災者の住まいの迅速な確保、生活再建」には県の取り組みだけではなく県民の備えも重要であると考えており、国の国土強靱化基本計画(平成30年12月14日閣議決定)内でも、脆弱性評価結果のポイントに「ハード整備の想定を超えたときの、避難から復興に至るまでのソフト対策を適切に組み合わせることが必要」の旨記載されております。公助の充実と合わせて自助意識の醸成を図るため、ハード面(耐震化等)とともに国としても普及を推進している「地震保険」の加入促進も実施願います。 - 該当項目:6.施策の重点化/起きてはならない最悪の事態(P.38~39)
施策の重点化において、地震に関し過去の災害経験から最悪の事態を想定することは重要ですが、経験だけでは認識が難しい直下型地震について重点化されていないように思われます。
令和元年6月修正「長崎県地域防災計画_地震対策編」においても、「『新編日本の活断層』によれば、大村から諌早北西付近、西彼杵半島北端、佐世保市北部、壹岐南部に存在することが指摘されている」や「活断層が確認されていない場所での震度予測を行うため、県内全域でM6.9の地震を想定しており、その場合、県内全域で震度6弱~6強が予測される。」との記述があり、地域に壊滅的な被害を与える直下型地震は長崎県のどこでも起こりうることを指摘しています。
長崎損保会では、今後も行政や関係機関と協力し、地域における安全・安心に資する取り組みを継続的に推進していきます。