長崎県住生活基本計画(素案)に対する意見表明
2022.03.03
~災害に強く、安全・快適に暮らせる住生活の実現のため要望および賛同の意を表明~
一般社団法人日本損害保険協会九州支部長崎損保会(会長:岩水 浩 三井住友海上火災保険(株)長崎支店長)では、2021年12月16日付に公表された「長崎県住生活基本計画(素案)」のパブリック・コメント(意見募集)に対し、長崎損保会として2022年1月13日付で意見表明を行いました。
当該計画は、社会情勢の変化に的確に対応するために見直しを行い、現在及び将来における県民の豊かな住生活の実現へ向けて、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する基本的な方針や推進すべき施策の内容を定め、住まいづくり・まちづくりを総合的かつ計画的に推進することを目的としています。また、「住生活基本法」に基づく「長崎県住生活基本計画(平成28年度~令和7年度)」を見直す計画として位置付けられています。
本計画では、長崎県における住生活に関する現状及び課題に対応するため、7章で構成されています。長崎損保会では、「第5章 基本的な施策」に関して以下の6点ついて意見表明をしております。
《主な意見内容》
1.基本施策Ⅰ-1 ①住宅・宅地の耐震化の促進
長崎県においては、この100年以内で震度6以上を記録した市町がないにも関わらず、本計画P50に掲載されているように、県民の「住宅に対する重要度」は「日当たり」の次に「地震時の安全性」が挙げられるなど、県民の地震に関する関心度は高い一方、貴県における新耐震基準以前に建築された住宅の割合は3割に及んでいることを考えると、重要な課題であると考えます。
本計画の基本施策においても第1番目に明示された「①住宅・宅地の耐震化の促進」施策は、ハードとソフトおよび公助・自助を組み合わせた適当なものとして、賛同いたします。
2.基本施策Ⅰ-1 ③安全な住宅地の確保
地形の特性から、長崎市や佐世保市等、斜面に市街地が密集している地域が存在しております。このような斜面地は、地震時等に大規模火災のリスクが高いことや、道路が狭く緊急自動車等の通行が困難となるケースが考えられることから、「③安全な住宅地の確保」施策を進めることに賛同いたしますが、長崎県において、当該進捗状況を見える化するため、国土交通省作成「住生活基本計画(全国計画)」にあるように、危険密集市街地の面積等による指数化を図り、少なくとも令和12年には解消できるよう、スピード感をもって施策を進展させるべきと考えます。
3.基本施策Ⅰ-1 ④危険個所における住宅の移転誘導等
本計画のP21にあるように貴県の土砂災害警戒区域指定数は約32,000に及び、全国第3位(土砂災害特別計画区域指定数は全国第2位)となっており、多くの県民が危険に晒されていることを鑑みると、危険住宅の移転促進などハード面の対策を推進しつつ、事情により移転ができない方への避難訓練等のソフト対策を進める「④危険個所における住宅移転誘導等」施策に賛同いたします。なお、移転に際しては「長崎県災害危険住宅の移転促進等の助成に関する条例」に基づく補助金が交付されるものと考えられるが、極めて客観的な指数と思われることから、当該数値の指数化も検討いただきたい。
4.基本施策Ⅰ-1 ⑤住まいと災害に関する住教育の推進
居住する地域における災害の危険性や防災対策等の認識等について、子どもも理解・行動できるよう、住教育の一部として、周知することに賛同いたします。
本協会においても文部科学省や消防庁等の多くの省庁にご後援いただいている小学生向けの「ぼうさい探検隊」という教育プログラムを長年実施しております。子ども目線での街歩きの中で大人では気づきにくい危ない場所(子供や高齢者には危険な避難路など)を見つけるなど、自らの命を守れるよう主体的な行動を育成するプログラムとなっております。当該プログラムも参考に、より実践的な防災教育を推進いただければと考えます。
5.基本施策Ⅰ-1 ⑥防災知識の普及や防災活動との連携
本計画の「⑥防災知識の普及や防災活動との連携」に賛同いたします。特に、地域における防災活動等の中心的役割を担う人材を育成する長崎県防災推進員(自主防災リーダー)養成講座は災害時の自助・共助に資するものと考えております。
当該講座の学習内容については、災害時の生命・財産を災害から守ることが第一義と考えますが、残念ながら防災だけでは災害を完全に防止できないことから、復旧・復興のために経済的な備えも学習されることが重要と思慮いたします。
6.基本施策Ⅰ-1 災害に強く安全に暮らせる住まいづくり・まちづくり
本計画P20においても指摘されているように、貴県において「一定規模以上の大雨・台風が過去10年間で17件発生」し、気象災害が激甚化しているとの見解に賛同します。また、県民においても、P50に掲載されている住宅に対する重要度では、「日当たり」、「地震時の安全性」の次に「台風時の安全性」が挙げられ、さらに全国平均を4%ポイントも上回る結果となっており、貴県において当該対策の重要性は高いと考えられます。しかし、「基本施策Ⅰ-1 災害に強く安全に暮らせる住まいづくり・まちづくり」には、当該具体的な施策が見当たらないように思慮いたします。
国土交通省作成「住生活基本計画(全国計画)」にもあるように、「ハザードマップの整備・周知等による水災害リスク情報の空白地帯の解消、不動産取引時における災害リスク情報の提供」や「避難場所の確保と連携した住宅改修や盛土等による住宅・住宅地の浸水対策の推進」はもちろんのこと、近年は住宅に対する風災リスクが増えていることから「住宅の改修による耐風性等の向上」に資する具体的な施策をご検討いただきたい。