「鹿児島県住生活基本計画(案)」に対する意見表明
2022.03.03
~自然災害および悪質修理業者への対応に関する要望および賛同の意を表明~
一般社団法人日本損害保険協会九州支部鹿児島損保会(会長:土橋 久満 三井住友海上火災保険(株)鹿児島支店長)では、2021年12月14日付に公表された「鹿児島県住生活基本計画(案)」のパブリック・コメント(意見募集)に対し、鹿児島損保会として2022年1月18日付で意見表明を行いました。
当該計画は、本格的な人口・世帯減少時代の到来に加え、頻発・激甚化する自然災害や新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う「新たな日常」などによる県民の住宅ニーズの高度化・多様化に対応し、県民の豊かな住生活を実現するため、住生活の安定確保及び向上の促進に関する基本的な方針や目標及び推進すべき施策を定め、住まいづくり・まちづくりを総合的かつ計画的に推進することを目的としています。
本計画は、住生活基本法第 17 条の規定に基づく「都道府県住生活基本計画」のほか,高齢者の居住の安定確保に関する法律第4条の規定に基づく「都道府県高齢者居住安定確保計画」、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律第5条の規定に基づく「都道府県賃貸住宅供給促進計画」及びマンションの管理の適正化の推進に関する法律第3条の2の規定に基づく「都道府県マンション管理適正化推進計画」として位置付けられています。
本計画は5章で構成されており、主に第4章に記載の自然災害対応および悪質リフォームの阻止に関し、以下の9点について意見表明をしております。
《主な意見内容》
1.「2.住生活に関わる社会的問題の顕在化(1)自然災害」
本計画P9に掲載されている平成30年住宅・土地統計調査「住宅及び居住環境に関して重要と思う項目」では、「地震時の安全性」が1番、次いで「台風時の安全性」が挙げられております。また、当県では令和2年7月豪雨および令和3年7月豪雨と2年連続して災害救助法が適用される災害が発生していることもあり、調査時点以上に住宅及び居住環境に対する自然災害対策の重要性が高まっているものと思慮いたします。本計画P10においても指摘されているとおり、「地震や台風・集中豪雨などの災害に強い住まいづくりのため、その備えを充実する」との見解について賛同いたします。
2.「第3章1.住宅政策の基本理念と住生活像(2)①安全な住まい」
住宅政策の基本理念「『ゆとりとうるおいのある住生活の実現』を目指して」に賛同するとともに、「目指す住生活像」の①安全な住まい「豊かな住生活の前提となる、頻発・激甚化する自然災害等から県民の生命・財産を守るための社会基盤・システムや早期に復旧するための体制が十分に整っています。また、『新たな日常』など社会環境の変化に柔軟に対応できる社会基盤やシステムも整っています。」とする住生活像の設定に賛同いたします。
3.「第4章1.目標と目標達成のための施策(1)自然災害に対して安全な住まいづくり」
「県土の強靱化を図るとともに災害から県民の生命や財産を守るため,災害に強い住宅・住環境づくりを促進します。また,地震・津波災害に際して被害の軽減を図るため,被害の未然防止や被害拡大の抑止につながるような施策を展開します。」との施策について賛同するものの、既に当計画で指摘されているように頻発・激甚化する自然災害に「災害に強い住宅・住環境づくり」で対応するには限度があるものと考えており、システム構築や被害が発生することを前提にした早期に復旧するための体制整備(自助による備えの周知)も重要と思慮いたします。
4.「1)がけ地等対策」
当県の土砂災害特別計画区域(土砂災害が発生した場合に、建築物に損壊が生じ住民の生命又は身体に著しい危害が生じるおそれがあると認められる土地の区域)は、全国9番目に多い19,000区域余りが指定されております。また、他県に比べて台風等による影響を大きいことを鑑みると、危険住宅の移転促進を計画的に進めるべく、国の住生活基本計画にあるように「災害の危険性の高いエリアにある既存潤沢の移転誘導」施策や警戒避難体制の確立に係る施策が必要と思慮いたします。
5.「2)地震対策」
新耐震基準に適合する住宅やブロック塀の耐震改修促進を行うことにより、住宅倒壊等による人命に対する危険性が相当程度減じられることが期待できることから、当県の住宅の耐震性の向上に関する施策に賛同いたします。
しかしながら、大規模地震においては、新耐震基準に適合した住宅であっても、損壊する住宅は少なくないことから、国の防災基本計画において国が加入促進している地震保険について、県として推進すべきと考えます。
6.「3)台風対策/浸水対策/降灰対策」
気象庁のデータによると当県の台風の上陸数は全国1位の42となっているなど台風の危険性が高いことや、本計画P9の「住宅及び居住環境に関して重要と思う項目」において多数の県民が「台風時の安全性」と回答していることを考慮すると、現在の県施策「情報提供」にとどまらず、国の住生活基本計画にあるように「住宅改修や盛土等による住宅・住宅地の浸水対策の推進」や「住宅の改修による耐風性の向上」などの台風・浸水・降灰に関する具体的な施策が必要と思慮いたします。
7.「第4章1.(1)②安全で優良な宅地供給の促進 2)ハザードマップの周知」
2)ハザードマップの周知に賛同いたしますが、国の「住生活基本計画」にもあるように、「ハザードマップの整備・周知等による水災害リスク情報の空白地帯の解消、不動産取引時における災害リスク情報の提供」が肝要と考えております。国土交通省が公表した昨年7月時点の都道府県別「想定最大規模降雨に対応したハザードマップ作成状況」によると、当県の公表自治体は作成対象市町村の半分にとどまっております。県におかれましては、空白地の解消に向けた取り組みとともに、不動産取引時における災害リスク情報の提供など具体的な周知施策をご検討いただきたい。
8.「第4章 1.(1)③災害発生時の住宅供給体制の整備」
1)災害発生時の住宅供給体制の整備および、3)被災住宅の復興による被災者への迅速な救済施策に賛同いたします。
なお、令和2年7月に内閣府の「被災者生活再建支援制度の在り方に関する実務者会議」検討結果報告においては「自然災害からの住宅再建等の生活再建についても『自助』による取組が基本であり、被災者生活再建支援金等の『公助』は、この取組を側面的に支援するものである。」と報告しております。当県の1)において「被災者の応急的な住まいの早急な確保」については、適当な施策であると考えておりますが、公助の制度周知とともに、県民に対する資力の確保の促進を図る施策も同時に行うべきと思慮いたします。
9.「第4章 2. (1)情報提供・相談体制の整備 ③消費者の利益の擁護及び推進」
「住宅履歴情報の蓄積、悪質リフォームの阻止や訪問販売の適正化等のための情報提供」については情報提供にとどまらず、悪質リフォーム業者や今般の自然災害の急増に伴う住宅修理に付随するサービスを提供する悪質業者を含めて、建築業法や消費者法等の関係各法令を適用し、県主導のもと阻止や適正化も並行して実施していただきたい。