「熊本市防災基本条例(仮称)(素案)」に対し意見表明
2022.08.05
~自助・共助・公助の適切な連携等、災害対策の理想の将来像実現に向け意見を表明~
一般社団法人日本損害保険協会九州支部熊本損保会(会長:加藤 和文 損害保険ジャパン(株)熊本支店長)では、2022年6月24日付で公表された「熊本市防災基本条例(仮称)(素案)」の意見募集に対し、熊本損保会として7月15日付で意見表明を行いました。
当該条例は、「市民、事業者、地域、市が防災に関する基本的な考え方を共有することにより防災意識の醸成を図り、協働で防災に取り組むことで、市民が安心して暮らせる、真に災害に強いまちを実現するための指針」として、制定される条例です。
熊本損保会では、熊本市が、これまでの災害の経験を生かして、あらゆる災害から市民の生命、身体、財産、そして暮らしを守るために当該条例を制定することにつき敬意を表すとともに、次の意見表明をしております。
《主な意見内容》
○前文
平成28年熊本地震等の甚大な被害のなかで、「私たちは互いに支え合いながら、復旧・復興に力を尽くすとともに、災害が残した爪痕と先人たちの記録から学び、備え、教訓に習い、これを後世に伝えていくことの大切さを痛感した。」ことを契機に、当該条例を制定されることに敬意を表します。
○(基本理念)第3条
「本市の防災は、様々な分野の平時におけるまちづくりの取組が防災につながるという認識の下、市、市民、事業者及び地域の防災組織の各々が防災 意識及び災害対応力を高めるとともに、自助、共助及び公助を結集すること。」について、「平時からのまちづくりの取組」が災害対応力につながること、および自助・共助および公助の適切なバランスを踏まえた基礎理念が示されており、賛同いたします。
○第2章 自助、共助及び公助 (市民の役割) 第4条
「市民は、次に掲げる取組を行うことにより、自ら及びその家族の安全を確保するよう努めるものとする。」について、今般の防災における市民の一定の役割を果たすことが重要であり、市民の役割を明確にする観点から賛同いたします。
また、「(1)自宅における防災に資する環境の整備を行うとともに、常に災害発生時における自立した生活を確保するための必要な物資等の備蓄に努めること。」について賛同いたしますが、「物資等の備蓄」では、復旧・復興期の資金確保が含まれているとは解釈できません。災害発生から復旧・復興期を通じて自立した生活を確保するためには、平時からの備えが重要と思慮いたします。
平成28年熊本地震を見ても、復旧・復興期に自立した生活の確保ためには、公助である被害者再建支援金および義援金だけでは不十分であり、国が普及を推進している地震保険などによる復旧・復興資金の確保(自助)が重要と考えています。
つきましては、現在、熊本市内の火災保険に加入いただいている方の大層(付帯率87%)が地震保険に加入いただいておりますが、未加入者に対する更なる普及を促すため、本条例にて地震保険に関する記載を追加すべきと考えます。
また、物資等の備蓄や復旧・復興資金の確保等に対する当該市民の役割を受け、第7条に市側の役割を明記すべきと考えます。
「(5) 災害発生時におけるボランティア等の多様な支援があることを理解し、自らの暮らしの再建を行うこと。」については、災害発生段階や自助・共助および公助のバランスを踏まえた記載にすべきと考えます。例えば、「災害発生初動期、応急期および復旧・復興期に応じた公助・共助があることを理解したうえで、自助により自らの暮らし再建を行うこと。」
また、当該市民の役割を受け、第7条に市側の役割を明記すべきと考えます。
○第6章 災害の教訓等の伝承 (災害の教訓等の活用等)
災害を他人事や過去の事ではなく、「自分事」と考えるためには、第6章の災害教訓の伝承は重要と考えており、本章記載事項に賛同いたします。
なお、本条例案第15条2項は主語の記載がないことから、主語の明確化していただきたい。