「長崎県耐震改修促進計画(令和4年改訂案)」に対し意見表明
2022.08.15
~地震被害の減災および自主的な地震対策の推進に向け意見を表明~
一般社団法人日本損害保険協会九州支部長崎損保会(会長:山内 亮 損害保険ジャパン(株)長崎支店長)では、2022年7月21日付で公表された「長崎県耐震改修促進計画(令和4年改訂案)」の意見募集に対し、長崎損保会として8月12日付で意見表明を行いました。
当該計画は、耐震改修促進法第5条第1項の規定に基づく長崎県内の建築物の耐震化を促進するための計画と位置づけられ、3年毎に耐震化を指標とした評価を実施することとなっています。
本計画は8章で構成されており、当会では長崎県民の生命の保護に資する住宅の耐震化を含む減災対策はもちろん、被災後の県民の財産保護について、以下4点の意見表明をしております。
《主な意見内容》
○第2章(2)住宅の耐震化の現状・目標
国が策定している「建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針(以下「基本方針」という)」では「令和十二年までに耐震性が不十分な住宅を、(中略)おおむね解消することを目標とする。」とあり、令和2年時点の耐震化率が86%であることを考慮すると、令和7年度までに95%を目標することは、国施策の達成を前提とした妥当な経過目標と考えます。
なお、「表2-4 耐震化率95%を目標とした場合の耐震化推計」によると、「耐震性能有りの住宅数(特に「改修済」)」の積み増しが必要とされているので、是非、本計画第3章以降の具体的な施策を駆使し、実現いただきたい。
○第3章(3)ア.ブロック塀等の安全対策
ブロック塀については、1978年宮城県沖地震において仙台市内の死者16名中11名がブロック塀の下敷きで犠牲になったことなどから、従来から早急な安全対策が求められていたが、2018年に発生した大阪北部地震でも、小学校の塀が倒壊するなどし、通学途中の小学生等2名の方が犠牲となっております。
今回、本計画におけるブロック塀に対する安全対策については、住民に対する啓発および、施工業者等への施工技術の周知に合わせて、除却に関する助成支援を追加しており、より積極的に県民の命を守る県の姿勢に対し、賛同いたします。
○第3章(3)ク.大規模盛土造成地の耐震対策
ご高尚のとおり、「大規模盛土造成地」は、大規模地震による盛土造成地の被害を受け、制定された「宅地造成等規制法」に基づき定められております。しかし、昨年7月に発生した静岡県熱海市における盛土崩壊による災害により、宅地造成等規制法等の規制では必ずしも十分でないことが判明し、本年5月「宅地造成及び特定盛土等規制法(以下「盛土規制法」という)」が改正公布されており、公布後1年以内に施行されることとなっております。盛土規制法は、県に対して5年毎の基礎調査、それを踏まえての各種規制区域の指定を求めております。当県のように比較的急峻な地理的特徴を鑑みると、現「宅地造成等規制法」に基づく大規模盛土造成地の情報提供・安全性の確認等はもちろんのこと、県民の生命および財産を守るために、国が設定しているKPI目標(施行後5年以内に全都道府県等が規制区間を指定)よりも、迅速に「盛土規制法」に基づく各種規制区域の指定をお願いしたい。
○第1章(4)第4章(3)ア.
住宅・建築物の地震に対する安全性向上のために、「県民は、自ら所有する建築物の地震に対する安全性や地域防災対策を、自らの問題のみならず地域の問題として認識し、住宅及び建築物の安全性を向上するよう努めることが重要です。」としており、本計画上、県民の役割の明確化を図っていることに賛同します。
それとともに、地震の揺れや津波のリスク、あるいは耐震改修の必要性や工法については、専門家からの十分な情報の提供がなければ、県民が的確な判断できかねる部分も多いとも考えております。ついては、第4章(3)アにあるように「県は、県民に対し地震に対する安全対策の必要性について周知するため、市町や関係団体と連携し以下の活動を実施します。」にあるように、県主導により、市町や各種団体が協力し、的確な啓発を実施いただきたい。
なお、当会においてもハザードマップは、県民の命と財産を守るために最重要の情報であると認識しており、協力できる事項があれば協力させていただきたい。
○第4章(5)自主的な地震対策の推進
国の「基本方針」の求める建築物(含む建物、建物付属設備、構築物)の耐震化を超え、県として、県民の命を守るため、家具や家電の転倒防止に関する啓発を行い、自主的な対策促進に取り組むことに賛同いたします。
なお、耐震診断が想定するような大地震が発生した場合には、「耐震性能有り」とされ、住宅の倒壊を免れたとしても、復旧・復興が必要な住宅が多数発生します。県は県民の財産を守り、迅速な復旧・復興を図る観点から、公的な被害者生活再建支援制度(公助)を周知するとともに、国と民間保険会社で共同運営している地震保険制度(自助)について、積極的に啓発していただきたい。