IAIS新型コロナウイルス感染症の保険セクターへの影響に係る市中協議へ意見提出
2020.09.10
日本損害保険協会(会長:広瀬 伸一)では、保険監督者国際機構(IAIS)(※1)が2020年7月27日から2020年9月4日まで市中協議(パブリック・コメント)に付した新型コロナウイルス感染症の影響等に関するステークホルダーへの意見募集に対し、意見を提出しました。
本意見募集は、保険セクターにおける新型コロナウイルスの影響等に係る5点の質問で構成されており、本邦損害保険業界の動向を踏まえ以下のとおり回答しました。
<質問内容および当協会意見概要>
Q1:Covid-19は、短中長期それぞれにおいて、金融システムと保険セクターにどのように影響するか。
A1:(日本の損害保険セクターへの影響の観点で回答)
短中期:経済停滞や個人消費落ち込みによる収入保険料の減少、金利低下や配当金の減少、株価の資産運用への影響、非対面募集の推進や社員の出社割合の縮小等による各種重要なオペレーション・経費への影響等。
長 期:ビジネスプロセスの変化や消費者行動の変化への対応、および消費者意識変容の促進等。
Q2:Covid-19の観点で、保険セクターの主なトレンド、リスク、機会は何か。
A2:トレンドおよびリスクはQ1への回答のとおり。
機 会:慣例や仕事のやり方等を抜本的に変革していくチャンスにもなり得る。加えて、企業活動や国民のライフスタイルの変化で生じる新たなリスクに対し保険商品を提供していくこと等も機会になり得る。
Q3:それらは保険監督者に何を意味するか。
A3:顧客保護を十分に確保しつつも、効率的、柔軟、かつ迅速に顧客対応を行う観点で、これまでの慣例や仕事のやり方等を抜本的に変革する際に、既存の監督・規制が障害になるケースもあると考えられ、保険監督者が、現在の監督・規制における課題を改めて確認いただくべきタイミングが来ていると言える。
Q4:回答者は今後1〜2年間にどの分野に注力するか。
A4:「保険事故受付業務」、「保険金、満期返戻金等の支払業務」、「保険契約締結業務」等の重要業務に関して、お客様に対する万全のサポートを継続することが最優先である。
また、Covid-19を踏まえてビジネスプロセスの変化や消費者行動の変化への対応、および消費者意識変容の促進を進めていく必要がある。加えて、より多くの企業・個人がサイバーリスクに晒されるため、サイバーレジリエンス強化やサイバー保険普及推進や、保険会社において新たに生じるリスクに対し、業界として取り組む必要がある。
Q5:同期間において、IAISはどの分野に注力すべきと思うか。
A5:IAISのリソースの制約と、保険会社の負荷を考慮しつつ、優先順位を付け、優先以外の分野については、一旦フォーカスから外すといった柔軟な対応を期待する。
保険会社の取り組みをサポートする以下のようなメッセージの発出をご検討いただきたい。
・各法域の監督者に、保険会社の業務改革への障害となっている既存の監督・規制に対する柔軟な見直しを促すこと
・投資家や格付会社に、新型コロナウイルス感染症による保険会社の一時的な業績の低下を短視眼的に捉えず、長期的な視点での判断を促すこと
・世界的な感染症の拡大の際に、保険セクターのみによって合理的に提供可能な補償の種類には限界があること(5月7日付IAISプレスリリースで言及があった内容)の理解促進 等
当協会は、IAISにおける国際保険監督基準策定等の議論に積極的に参加しており、今後も関係国際機関等に対して本邦業界の意見を表明していきます。
(※1)保険監督者国際機構(IAIS)の概要
1994年に設立され、世界約150カ国・地域の保険監督当局(メンバー)で構成。主な活動は以下のとおり。
1)保険監督当局間の協力の促進
2)保険監督・規制に関する国際基準の策定および導入促進
3)メンバー国への教育訓練の実施
4)金融セクターの他業種の規制者等との協力
※日本からは金融庁がメンバーとして参加しており、当協会もステークホルダーとして積極的に関与する方針を掲げている。