IAIS流動性メトリクス策定に関する市中協議に意見提出
2021.02.12
日本損害保険協会(会長:広瀬 伸一)は、保険監督者国際機構(IAIS)(※1)が2020年11月9日から2021年2月7日まで市中協議(パブリック・コメント)に付した「流動性メトリクス策定:フェーズ1 - Exposure Approach」に対する意見を提出しました。
<当文書の概要>
・IAISは、「保険セクターにおけるシステミックリスクの評価及び削減のための包括的枠組み(Holistic Framework: HF)」(※2)において、グローバルモニタリング(Global Monitoring Exercise:GME)を行い、個別の保険会社および保険セクターにおけるシステミックリスクの蓄積をモニタリングすることとしています。
・IAISでは、GMEにおいて流動性リスクをモニタリングするための指標 として「流動性メトリクス」を二段階で開発しており、本市中協議は第一弾の「エクスポージャーアプローチ(EA)に基づく簡易的な流動性指標」の開発を目的としております。
本文書案に対して、当協会からは、以下概要のとおり意見を提出しました(詳細は添付資料参照)。
<当協会意見の概要>
・保険グループの流動性に関する特性は個別性が強いため、各グループの流動性を精緻に把握する目的でEAに基づく指標を用いるのでは不十分である。各グループの流動性の状況については、HFも踏まえた各法域における監督・規制の取り組みの中で確認されているため、各法域の監督者が監督の中で確認することで良いと考える。
・一方で、保険セクター全体の流動性に関して、EAに基づいた数値を使用することには、簡便的な早期警戒リスク指標としての意味はあると考えられ、その意味では賛同する。ただし、評価の客観性の確保や、保険会社の対応ロードの観点から、個社の詳細な内部データではなく、出来る限り個別保険グループの情報も含め開示情報をベースとすべきである。
IAISは、今回の市中協議に寄せられた意見を基に第一弾のエクスポージャーアプローチに基づく簡易的な流動性指標に係る更なる検討を進めるとともに、2021年秋に第二弾の「保険会社の将来キャッシュフロー予測に基づいた企業予測アプローチ(Company Projection:CP)」の市中協議を実施のうえ、2022年にモニタリングに使用する流動性指標を確定する予定としています。
当協会は、IAISにおける国際保険監督基準策定の議論に積極的に参加しており、今後も関係国際機関等に対して本邦業界の意見を表明していきます。
(※1)保険監督者国際機構(IAIS)の概要
1994年に設立され、世界約200カ国・地域の保険監督当局(メンバー)で構成。主な活動は以下のとおり。
1)保険監督当局間の協力の促進
2)保険監督・規制に関する国際基準の策定および導入促進
3)メンバー国への教育訓練の実施
4)金融セクターの他業種の規制者等との協力
※日本からは金融庁がメンバーとして参加しており、当協会もステークホルダーとして積極的に関与する方針を掲げている。
(※2)包括的枠組み(Holistic Framework: HF)の概要
保険セクターにおけるシステミックリスクの潜在的な集積の特定と削減を目的としてIAISが定めた枠組み。監督者の要件(介入権限、危機管理グループ設置、破綻処理計画策定)や保険者の要件(流動性リスク・カウンターパーティーリスク管理の強化、再建計画策定等)、IAISによるグローバルな保険セクターのモニタリング活動(個社モニタリング、セクターワイドモニタリング)の実施、IAISによる実施状況の評価などが定められている。