IAIS国際資本基準と合算手法との比較可能性に関する市中協議文書に意見提出
2021.02.03
日本損害保険協会(会長:広瀬 伸一)では、「保険監督者国際機構(IAIS)」(※1)が2020年11月9日から2021年1月22日まで実施した「『合算手法』が国際資本基準と比較可能な結果をもたらすか否かの評価に使用される基準の開発に向けた定義及びハイレベル原則案に関する市中協議」に対する意見を提出しました。
IAISによる国際資本基準(ICS)(※2)の開発と並行し、米国等の一部の法域は合算ベースのグループ資本計測(「合算手法(AM)」)の開発を進めています。合算手法は、米国で実施されている単体ベースの資本規制(リスク・ベース資本(RBC))を所定の手法で合算し、グループベースの資本規制とするもので、IAISは、同手法がICSと比較可能な結果(comparable outcome)をもたらすか否かについて、モニタリング期間の終了までに評価することとし、AMがICSと比較可能な結果をもたらすと判断された場合、AMは、規制資本としてICSが導入される際に、同等な結果をもたらすアプローチ(an outcome-equivalent approach)と見做されることとなっています。
IAISでは、AMとICSの比較可能性を評価するための基準を作成することとしており、同基準の作成及び比較可能性の評価を、次のとおり段階的に進めることとしています。
2020年第4四半期(10-12月):「比較可能な結果」の定義、及び評価に使用される基準の開発に向けたハイレベル原則に係る市中協議(本市中協議)
2021年第4四半期(10-12月):評価に使用される基準に係る市中協議
2023年第3四半期(7-9月):合算手法がICSと比較可能な結果をもたらすかの評価
今回の市中協議で、IAISは「比較可能な結果の定義」及び「6つのハイレベル原則」の案に対する意見を求めています。これに対し、内容の明確化や、AMが定量的にICSと同程度に頑健となること等を求める観点で意見を提出しました。
<当協会意見概要>
・「比較可能な結果」について、ICSとAMを用いて健全性を評価するにあたり、どちらの結果を用いても問題なく保険グループの健全性の状況を同様に把握できると投資家や格付会社等から見做されるような状態を示していると理解している。
・ICSと合算手法は、監督措置発動のトリガーとして使用されるものと理解しているが、これらのトリガーの在り方の定めについて、「時間の経過とともに(over time)」同様の結果を示すという表現は不明確であり、今後比較基準を作成する際には明確化すべき。
・「短期的な市場変動ではなく、ビジネスサイクルを通じて相関する」との記載は不明確であり、今後比較基準を作成する際には、この記載の趣旨を明確化すべき。
・AMはICSと同様かそれ以上に保守的な基準であるべきであり、記載案に賛同する。
・開示に関してAMがICSと同様に透明であるとは、AMもICSと同様にComFrameで定める開示原則の枠組みの下で開示が行われるとの趣旨であると理解した。
当協会では、IAIS等の国際機関における各種基準策定の議論に積極的に参加しており、今後も関係国際機関等に対して本邦業界の意見を表明していきます。
(※1)保険監督者国際機構(IAIS)の概要
1994年に設立され、世界約150カ国・地域の保険監督当局(メンバー)で構成。主な活動は以下の通り。
1)保険監督当局間の協力の促進
2)保険監督・規制に関する国際基準の策定及び導入促進
3)メンバー国への教育訓練の実施
4)金融セクターの他業種の規制者等との協力
※日本からは金融庁がメンバーとして参加しており、当協会もステークホルダーとして積極的に関与する方針を掲げている。
(※2) 国際資本基準(ICS)
国際的に活動する保険グループ(Internationally Active Insurance Groups:IAIGs)に対する各国の資本規制間の比較可能性向上を目的として、IAISがComFrameの一部として2013年から開発を進めているIAIGsに適用される経済価値ベース、グループ(連結)ベースの資本十分性の指標。ICSは段階的に開発され、2017年7月にICS1.0が、2019年11月にICS2.0が策定された。IAISは、ICS2.0の策定後、2020年から5年間の試行期間(モニタリング期間)を設け、ICS参照値の監督当局への機密報告や監督カレッジでの議論等を通じ、内部モデルの扱いや比較可能性、ICSによる意図せざる影響等を分析・検討のうえ最終化することとされており、各国における法制化を経てIAIGに対する規制資本として適用されることとなっている。