「第11次長崎県交通安全計画(素案)」に意見表明
2021.03.25
~被害者支援の充実などを要望~
一般社団法人日本損害保険協会九州支部長崎損保会(会長:藤本 直季・東京海上日動火災保険株式会社 長崎支店長)では、長崎県が2021年3月15日(月)~4月14日(水)の間に実施している「第11次長崎県交通安全計画(素案)」に関するパブリック・コメント(意見募集)に対し、藤本 長崎損保会会長名で意見表明を行いました。
今回の計画は、交通安全対策基本法第25条第1項の規定に基づき交通安全に関する施策の大綱を定めるもので、概要は以下のとおりです。
≪「第11次長崎県交通安全計画(素案)」の概要≫
- 1.基本理念 -
交通安全計画はこれまで、人優先の交通安全思想の下、道路交通事故死者数を過去最悪であった時と比べて約2割にまで減少させるなどの成果を上げてきたところであるが、依然として道路交通事故は毎日発生し、高齢者が関係する交通事故の割合が高まっている。高齢化の進展への適切な対処とともに、子育てを応援する社会の実現が強く要請される中、時代のニーズに応える交通安全の取組が今、一層求められている。これまで実施してきた各種施策の深化はもちろんのこと、交通安全の確保に資する先端技術を積極的に取り入れた新たな時代における対策に取り組むことが必要であり、これにより交通事故のない交通安全社会を目指す。 - 2.計画の体系 -
○道路交通の安全
1.道路交通事故のない社会を目指して
人命尊重の理念に基づき、究極的には交通事故のない社会を目指す。
2.道路交通の安全についての目標 令和7年までに年間の24時間死者数を30人以下にする。
令和7年までに年間の重傷者数を280人以下にする。
3.道路交通の安全についての対策
<6つの視点>
(1)高齢者及び子供の安全確保、(2)歩行者及び自転車の安全確保と遵法意識の向上、(3)生活道路における安全確保、(4)先端技術の活用推進、(5)交通実態等を踏まえたきめ細かな対策の推進、(6)地域が一体となった交通安全対策の推進
<8つの柱>
(1)道路交通環境の整備、(2)交通安全思想の普及徹底、(3)安全運転の確保、(4)車両の安全性の確保、(5)道路交通秩序の維持、(6)救助・救急活動の充実、(7)被害者支援の充実と推進、(8)調査研究の充実
○鉄道交通の安全
(略)
○踏切道における交通の安全
(略)
- 3.計画期間 - 令和3年度から令和7年度までの5年間
これに対し、長崎損保会では、地域における安全・安心を推進する観点等から、以下7点の意見表明を行っています。
≪意見内容≫
- <該当箇所>
該当ページ番号
11ページ および 34ページ および 54ページ
該当項目名称
第3節
Ⅰ、(2)歩行者及び自転車の安全確保と遵法意識の向上
第3節
Ⅱ、2、(3)、ウ 自転車の安全利用の推進
第3節
Ⅱ、7 被害者支援の充実と推進 - <意見内容>
自転車運転者による加害事故に関し、P.54では「被害者の救済の十全を図るため、関係事業者の協力を得つつ、損害賠償責任保険等への加入を加速化させる」となっておりますが、P.11およびP.34では、「損害賠償責任保険等への加入促進等の対策を推進する。」との記載にとどまっております。国土交通省の資料によると条例などで同保険等の加入を義務化することで加入率が引き上げられるとの効果がみられることから、損害賠償責任保険等への加入を加速化させるためには、同保険等への加入義務化をお願いいたします。
また、損害賠償保険等への加入に関する関係事業者の協力について、損害保険業界および損害保険協会として、できる限り協力したいと考えております。 - <該当箇所>
該当ページ番号
16ページ
該当項目名称
第3節、Ⅱ、1、(3)、イ 事故危険箇所対策の推進 - <意見内容>
当協会では、毎年秋に、県別の事故多発交差点マップ(人身事故の多い交差点のマップ)を公表しており、事故危険箇所の指定において参考にしていただければ幸いです - <該当箇所>
該当ページ番号
27~30ページ
該当項目名称
第3節、Ⅱ、2 交通安全思想の普及徹底 - <意見内容>
生涯学習として成長過程にあわせた交通安全教育を推進することについて、賛同いたします。
なお、特に小学生、中学生、高校生においては移動手段として自転車を利用するケースが多いため、自転車事故を未然防ぐための自転車等の交通安全教育が第一義と考えますが、自転車事故の加害者となった際には、極めて重大な責任を負う可能性もあることとから、その責任への対処法等についても教育することは、第3節Ⅱの施策「7被害者支援の充実と推進」において指摘されている「近年、自転車が加害者となる事故に関し、(中略)、損害賠償責任保険等への加入を加速化する。」のためにも若年時からの教育が重要と考えます。 - <該当箇所>
該当ページ番号
33ページ
該当項目名称
第3節、Ⅱ、2、(2) 効果的な交通安全教育の推進 - <意見内容>
「効果的な交通安全教育の推進」に賛同します。特に今般の教育のICT化やコロナウイルス感染症の予防を踏まえると、計画にも記載のある「対面によらない交通安全教育や広報活動についても効果的に推進する。」ことが喫緊の課題と考えております。
当協会では交通事故のリスクを認識いただくとともに、それに伴う責任およびその対処法として保険を説明する「交通事故とその責任」や「自転車を取り巻くリスクとその責任」などの動画教材を教育機関に提供しておりますので、長崎県の対面によらない交通安全教育の推進にご協力できるものと考えております。
- <該当箇所>
該当ページ番号
55ページ
該当項目名称
第3節、Ⅱ、7、(1) 自動車損害賠償保障制度の充実等 - <意見内容>
「自動車損害賠償保障制度の充実等」とのタイトルが付されていますが、文案の内容は保障制度の充実に関する記載が見受けられないことから「自動車事故被害者の救済資力の充実等」などにタイトルを変更してはいかがでしょうか。 - <該当箇所>
該当ページ番号
55ページ
該当項目名称
第3節、Ⅱ、7、(1)、イ 任意の自動車保険(自動車共済)の充実等 - <意見内容>
長崎県の任意対人賠償責任保険の普及率は全国平均75%を大きく下回る68%(2019年3月時点)に留まっており、事故時に十分な補償を受けれない被害者が発生していることが考えられ、計画に記載されている「交通事故被害者の救済等の充実に資するよう、その普及率の向上について引き続き指導を行う。」との趣旨に賛同いたします。ただし、当該文案では、指導主体が明らかではなく、具体的対応が判然としないことから「県として、交通事故のリスクの大きさや任意自動車保険の必要性を県民に周知し、任意自動車保険等の普及に努めてまいります。」といった記載にしてはいかがでしょうか。
また、当然のことながら当会としても被害者支援の充実と推進の観点から県とも協力しつつ任意自動車保険の普及に努めてまいります。 - <該当箇所>
該当ページ番号
54ページ
該当項目名称
第3節、Ⅱ、7 被害者支援の充実と推進 - <意見内容>
善意契約を前提する保険取引において、残念ながら交通事故に纏わる保険金不正請求が発生している状況です。社会的公共性が高い損害保険制度を維持するとともに、社会秩序を保つため、損害保険業界では防犯対策協議会を組織し、長崎県警にも協力をいただき、不正請求防止に努めておりますので、引き続き県・県警との連携・協力をお願いいたします。
長崎損保会では、今後も行政や関係機関と協力し、地域における安全・安心に資する取り組みを継続的に推進していきます。