IAIS保険分野におけるビッグデータ分析の使用に係る文書案に意見提出
2019.10.25
イノベーションと消費者保護のバランスを踏まえた監督を要望
日本損害保険協会(会長:金杉 恭三)では、保険監督者国際機構(IAIS)(※1)が2019 年9月2日から10月16日まで市中協議(パブリック・コメント)に付した「保険分野におけるビッグデータ分析の使用に関するイシューズ・ペーパー(IP)案」(※2)に対する意見を10月15日に提出しました。
本文書は、保険分野におけるビッグデータの利用による消費者の便益とリスク、監督者に与えうる影響等について一定の見解を示した文書案で、IAISが昨年採択した「保険事業におけるデジタルテクノロジー利用の増大および消費者アウトカムへの潜在的影響に係るIP(デジタル化IP)」(※3)を踏まえた内容となっています。
<文書案の主な内容>
- 保険者(保険仲介者も含む)によるビッグデータ分析使用の潜在的な利益とリスクの理解に役立てるため、保険商品ライフサイクルの各段階(商品設計、マーケティング、販売と流通、価格設定と引受、保険金請求処理)におけるデータ収集・処理・使用方法等を考察している。
- また、保険者による保険商品ライフサイクル全体にわたるビッグデータ分析の様々な適用が消費者アウトカムに与える潜在的影響や、その結果が監督者に与えうる影響等を考察し、一定の見解を示している。
本文書案に対して、当協会からは、「保険会社によるイノベーションと消費者保護のバランスを適切にとるべき」旨を本IPに明記すべき、保険業界以外の新規参入企業が保険類似業務を行う場合は顧客保護の観点から保険会社と同等の監督・規制の対象とすべき等の意見を提出しました。
<当協会意見概要>
- 昨年のデジタル化IPでは、監督者にとっての重要な課題として、「保険会社によるイノベーションと消費者保護のバランスをとる」ことが記載されており、本IPにも明記すべき。
- 保険業界以外からの新規参入企業(IT企業やスタートアップなど)も、顧客保護の観点から、保険類似業務を行う場合は保険会社と同等の監督・規制の対象とすべき。
- 本IPでは、アルゴリズムの不透明さが消費者保護等に影響を与える可能性やアフォーダビリティといった事項に焦点を当てているが、同時に、各法域の保険制度の枠組み(強制保険制度の位置づけ)や既存の料率監督に関する事項との整合性も考慮すべき。
- データの不適切な利用により、保険会社または保険セクター全体への不信が生じうる可能性については理解するものの、個人情報保護の観点から、データ収集にあたっては事前同意を求める法域も多く、そのような観点も触れるべき。
IAISは、今回の市中協議に寄せられた意見を参考にさらなる検討を進め、2020年初頭までに内容を固める予定です。
当協会は、IAISにおける国際保険監督基準策定の議論に積極的に参加しており、今後も関係国際機関等に対して本邦業界の意見を表明していきます。
(※1)保険監督者国際機構(IAIS)の概要
1994年に設立され、世界約150カ国・地域の保険監督当局(メンバー)で構成。主な活動は以下のとおり。
1)保険監督当局間の協力の促進
2)保険監督・規制に関する国際基準の策定および導入促進
3)メンバー国への教育訓練の実施
4)金融セクターの他業種の規制者等との協力
※日本からはメンバーとして金融庁が参加しており、当協会もステークホルダーとして積極的に関与する方針を掲げている。
(※2)イシューズ・ペーパー(IP)
IAISが作成する文書の一類型。扱うトピックの背景や現在行われている取組み、ケーススタディ等を提供し、規制・監督上の論点・課題を特定することを意図としている。説明を提供することが目的であり、監督者がその内容を実施することは期待されていない。ただし、基準策定に向けた準備として作成されることが多く、IAISによる今後の作業に関する推奨を含む場合がある。 「保険分野におけるビッグデータ分析の使用に関するイシューズ・ペーパー(IP)案」の原文は、こちら(※)でご覧いただけます。
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(※3)保険事業におけるデジタルテクノロジー利用の増大および消費者アウトカムへの潜在的影響に係るIP
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