IAIS統制機能監督に係る文書案に意見提出
2021.04.08
明確性の向上やガバナンスの多様性確保等を要望
日本損害保険協会(会長:広瀬 伸一)は、保険監督者国際機構(IAIS)(※1)が2021年1月25日から3月26日まで市中協議(パブリック・コメント)に付した「統制機能監督に関するアプリケーション・ペーパー(AP)案」(※2)に対する意見を提出しました。
<当文書の概要>
・ICP(※3)およびComFrame(※4)に記述されている統制機能の監督実務に係るガイダンスを提示するために作成された文書。特にICP 8(リスク管理および統制機能)の遵守を支援し、ICP 5(個人の適格性)およびICP 7(コーポレートガバナンス)とも関連する。
・統制機能の監督上の課題や効果的な監督実務に係るIAISメンバー間の調査結果や、ICP 4,5,7,8で規定されているコーポレートガバナンス等に係る基準に関するピアレビューの結果を基にしている。
本文書案に対して、当協会からは、以下概要のとおり意見を提出しました(詳細は添付資料参照)。
<当協会意見の概要>
・本APの位置付けの明確化のため、新たな基準や監督上の期待を設定するものではないことを冒頭に追記すべき。
・統制機能の各部門が独立している前提で記載されているように読めるが、ガバナンスの在り方は法域によって異なると理解している。日本においては保険数理機能が複数部門に跨って機能発揮するケースが一般的であるが、このような在り方も容認されることを確認したい。
・内部統制システムと統制機能およびリスク管理の関係について複数箇所で定義・記載されているが、用語の使われ方について平仄が合わない部分があるため、統一されるよう修文すべきである。
・統制機能のキーパーソンの任命・報酬制度の決定について、取締役会の承認が求められる前提での記載があるが、これらは各社の実態等に即して判断されるべきである。
IAISは、今回の市中協議に寄せられた意見を参考に更に検討を進め、本年6月に確定版を採択予定です。
当協会は、IAISにおける国際保険監督基準策定の議論に積極的に参加しており、今後も関係国際機関等に対して本邦業界の意見を表明していきます。
(※1)保険監督者国際機構(IAIS)の概要
1994年に設立され、世界約200カ国・地域の保険監督当局(メンバー)で構成。主な活動は以下のとおり。
1)保険監督当局間の協力の促進
2)保険監督・規制に関する国際基準の策定および導入促進
3)メンバー国への教育訓練の実施
4)金融セクターの他業種の規制者等との協力
※日本からは金融庁がメンバーとして参加しており、当協会もステークホルダーとして積極的に関与する方針を掲げている。
(※2) アプリケーション・ペーパー(AP)
IAISが作成する文書の一類型。IAISの監督文書(ICP、ComFrame等)の特定のテーマにおいて、原則や基準の一律な解釈や適用が難しい場合に、事例やケーススタディを提供することを目的に作成される文書。助言や具体例、推奨、事例などを含む。
(※3) 保険基本原則(ICP)
IAISが定める、すべての保険者・保険グループの監督において適用されるべき基本原則。保険監督機関が自らや保険会社に関し権限を持ち、管理すべき分野(例:免許交付、モニタリング、検査、破綻処理、ガバナンス、リスク管理、資本十分性、投資、開示等)について定める。適用度・強制度に応じ、「原則」、「基準」、「ガイダンス」の3層で構成。IAISのメンバー国はICPに則った監督制度を実施することが推奨されている。
(※4) ComFrame
「国際的に活動する保険グループ(IAIGs)」監督のための共通枠組みで、IAIGsに対しICPに追加適用される要件。ガバナンス、リスク管理等の定性要件、定量要件(資本要件)、監督者に対する要件(監督者間協力、破綻処理等)を含む。適用度・強制度に応じ、「ComFrame基準」、「ComFrameガイダンス」の2層で構成(ComFrameにかかる記載はICPと同一文書内に記載)。なお、「IAIGs」はIAISが設けた2つの基準(国際的事業活動基準(3つ以上の管轄区域で事業を行い、母国以外のグロス保険料が10%を超える)および規模基準(総資産500億米ドル以上または保険料が100億米ドル以上))に従い、各監督当局によって選定される。