IAISマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関する 文書案に意見提出
2021.07.27
日本損害保険協会(会長:舩曵 真一郎)は、保険監督者国際機構(IAIS)(※1)が2021年5月18日から7月17日まで市中協議(パブリック・コメント)に付した「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(AML-CTF)に関するアプリケーション・ペーパー(AP)案」(※2)に対する意見を提出しました。
<当文書の概要>
- 本APの目的は、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与(ML/TF)が保険セクター内でどのように発生し得るか、及び関連するリスクを軽減するための措置について情報を提供すること。主に生命保険会社及び仲介者を対象としている。
- 2013年に策定した内容を改定するもので、用語の調整や金融活動作業部会(FATF)勧告との整合性確保、およびICP(※3) 22の最新版に関する新しいガイダンスの提供を含む。
- 当局の体制整備や内部研修等にも役立つよう、IAISメンバーから提供された実際の取組みをケーススタディとしてAnnexに盛り込んでいる。
- 市中協議を経て、2021年11月に確定、公表予定である。
本文書案に対して、明確化や透明性確保の観点から意見案を作成し、当協会からは、以下概要のとおり意見を提出しました(詳細は添付資料参照)。
<当協会意見の概要>
- 本APの位置づけをより明確にするため、「本文書は新たな基準や期待を設定するものではない。」("this paper does not set new standards or expectations.")旨を追記いただきたい。
- 対象を特定した金融制裁(TFS)の遵守など生保、損保の区分にかかわらず共通で対応すべき事項も一部存在するものの、主として実損てん補方式である損保商品がマネー・ローンダリングやテロ資金供与に利用されることは生保商品に比べて限定的と考えられるため、「本文書は主に生命保険会社及び仲介者を対象としている。」ことを支持する。
- FATF基準を参照している部分は、具体的にFATF基準のどの部分を参照しているかを追記いただきたい。
- Annex1および2に掲載されている事例が保険セクターにおけるML/TFの一般的な事例なのか、あるいはレアケースも含め実例を列挙したものかの位置づけを明確にした上で、レアケースについてはその旨を追記いただきたい。
(※1)保険監督者国際機構(IAIS)の概要
1994年に設立され、世界約200カ国・地域の保険監督当局(メンバー)で構成。主な活動は以下のとおり。
- 1.保険監督当局間の協力の促進
- 2.保険監督・規制に関する国際基準の策定および導入促進
- 3.メンバー国への教育訓練の実施
- 4.金融セクターの他業種の規制者等との協力
※日本からは金融庁がメンバーとして参加しており、当協会もステークホルダーとして積極的に関与する方針を掲げている。
(※2) アプリケーション・ペーパー(AP)
IAISが作成する文書の一類型。IAISの監督文書(ICP、ComFrame等)の特定のテーマにおいて、原則や基準の一律な解釈や適用が難しい場合に、事例やケーススタディを提供することを目的に作成される文書。助言や具体例、推奨、事例などを含む。
(※3) 保険基本原則(ICP)
IAISが定める、すべての保険者・保険グループの監督において適用されるべき基本原則。保険監督機関が自らや保険会社に関し権限を持ち、管理すべき分野(例:免許交付、モニタリング、検査、破綻処理、ガバナンス、リスク管理、資本十分性、投資、開示等)について定める。適用度・強制度に応じ、「原則」、「基準」、「ガイダンス」の3層で構成。IAISのメンバー国はICPに則った監督制度を実施することが推奨されている。