国土交通省と連携し、島根県美郷町でハザードマップ利活用講習会を開催しました!
~「ハザードマップ/マイ・タイムラインの重要性」&「水害から生活を守るための制度・備え」を啓発~
2021.12.20
日本損害保険協会(会長:舩曵 真一郎)は、2021年4月からスタートした3年間の第9次中期基本計画で「災害に強い社会の実現」を掲げており、その取組みの一つとして、ハザードマップの活用促進を行っています。
12月12日(日)に国土交通省と連携して、島根県美郷町で水災害への備えをテーマとした「ハザードマップ利活用推進講習会」を同町の自主防災会の方々等を対象に開催し、「ハザードマップ/マイ・タイムラインの重要性」および「水害から生活を守るための制度・備え」を啓発しました。
また、日本損害保険協会が1952年度から毎年実施する消防自動車寄贈事業について、今年度は全国各地に寄贈する計15台の軽消防自動車のうち1台を島根県美郷町に寄贈することから、同町総務課長の木川 士朗 氏は、消防団と連携して火災予防に向けて活用していくと挨拶しました。
講習会概要
- 日時
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12月12日(日)10:00~12:00
- 会場
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島根県美郷町 みさと館 3階 多目的室・大和事務所 多目的ルーム
- 主催
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島根県美郷町
- 共催
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国土交通省水管理・国土保全局、一般社団法人 日本損害保険協会
- 参加者数
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約20名
①開会挨拶
中村 哲也 氏(日本損害保険協会 島根損保会会長/三井住友海上社 山陰支店長)
<挨拶概要>
- 「ハザードマップ」には様々な災害リスク情報が表示されており、これを理解することで、平時においては、危険の少ない場所を選択して居住することなどにつながり、災害時においては、安全な避難行動をとることにもつながるため、本講座を通じて、理解を深めていただきたい。
- 日本損害保険協会では、1952年度から軽消防自動車を地方自治体に寄贈しており、今年度は島根県美郷町に軽消防自動車を寄贈する。軽消防自動車が納車されたら、消火活動や防災活動などにお役立ていただきたい。
② 講演1『ハザードマップの活用方法を学ぶ』
矢守 克也 氏(京都大学防災研究所 教授)※オンライン出演
<講演概要>
- ハザードマップは、いわば「科学に基づいた災害の予言書」であり、これを参考に災害から命を守るための避難の在り方などを事前に考えておくことが重要である。
- 具体的に避難の在り方を考えるにあたっては、「①いつ逃げるのか」「②どこへ逃げるのか」がポイントである。①については、避難するきっかけとする「避難スイッチ」をあらかじめ・具体的に・みんなで決めておくことが重要である。②については、自治体が指定する場所に避難するのがベストだが、実際にそういった場所に避難できない場合の「セカンドベスト」の場所を決めておくことが大事である。
- 5年間にわたり土砂崩れに対する避難を20回にもわたり繰り返し、実際に最後の1回で被害が起きて命が助かった事例もある。避難をしても実際に被害が起きないと「空振り」という言葉でネガティブな意味で呼称されることもあるが、たとえ被害が起きなかったとしても、野球で言えば「空振り」ではなく「素振り」として捉え、着実に避難行動を実行し続けることが大事である。
③ 講演2『水害から生活を守るための制度・備え』
岡本 正 氏(銀座パートナーズ法律事務所 弁護士・博士(法学)・ファイナンシャルプランナー(AFP)岩手大学地域防災研究センター客員教授)※オンライン出演
<講演概要>
- 被災した直後からあらゆる面でお金の問題が発生する。これに備えるためには、平時から一人ひとりが、普段の自分の生活における「お金の流れ」(「収入と財産」や「支払っているお金」等)を明示化して整理しておくことが重要である。そして、被災時にお金の流れのどこが途絶える可能性があるのかという点を想定しておくことで、被災した場合の生活再建への道筋について、具体的にイメージすることができるようになる
- 自然災害で被災した際の生活再建に役立つ基本的な法制度を、自然災害が起こる前から「知識の備え」としておくことで、被災後の希望につなげることができる。居住家屋が被災したことを証明する「罹災証明書」は、公的な支援の起点になるため、まずは「罹災証明書」の申請が必要である。また、災害規模によるが、住宅の損壊に応じて「被災者生活再建支援金」を申請できる場合がある。さらに、大規模災害によってご家族が亡くなった場合等には「災害弔慰金」を申請することを忘れないでほしい。
- 被災した際のローンの減免制度として、「自然災害債務整理ガイドライン」が利用できる場合があるため、自己破産だけを考えるのではなく、ガイドラインの活用を選択肢として考えることが重要である。公共料金等の減免措置も、各インフラ事業者や自治体のHPに掲載されていることもある。このほかにも、民間や行政の支援制度が多く存在するので、諦めないで情報にアンテナを張ってほしい。
- 住宅再建に必要な金額を考えると、公的支援だけ不足する場合がある。そこで、損害保険等の加入が重要になる。損害保険金の支払いを受けることで、より一層速やかな生活再建につながるというデータも示されている。水災に備えるためには、現在加入している住宅の火災保険等で不足がないか確認することが重要である。地震の場合は火災保険単独では補償されないため、地震保険が付帯されているのか確認することもポイントである。
④ 講演3『マイ・タイムラインの普及啓発の取組み』
西川 雅規 氏(国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 水防企画室 課長補佐)
<講演概要>
- 平成27年の鬼怒川の氾濫では、約4,300名の逃げ遅れが発生したが、ハザードマップを見たことがあるのは約3割に過ぎなかった。こうしたことを踏まえ、国土交通省では、住民一人ひとりがハザードマップ等をもとに自分たちの避難行動計画をあらかじめ考えておくことが重要だと考えており、全国での『マイ・タイムライン』の普及を目指している。
- 国土交通省では、『逃げキッド』というツールを活用したワークショップ等の開催や、最近ではデジタル技術を活用した取組みを通じて、『マイ・タイムライン』を推進しているところ。適切な避難をしていただくために、ぜひ『マイ・タイムライン』を作成し、活用いただきたい。
⑤ 閉会挨拶
木川 士朗 氏(島根県美郷町 総務課長)
- 今回ご出演いただいた皆さまに感謝申し上げるとともに、本講習会を今後の島根県美郷町の防災力向上に活かしていきたい。
- また、日本損害保険協会から今年度寄贈いただく予定の軽消防自動車は、消防団と連携し、火災予防に向けて活用していきたい。
※講習会終了後、島根県美郷町の洪水ハザードマップをもとに、国土交通省のツール「逃げキッド」を使用した、「マイ・タイムライン」を作成するワークショップを実施した。
講師
鮎川 一史 氏(河川情報センター 流域情報事業部 参事)
原田 一平 氏(同上)