2019年度自賠責運用益拠出事業18億円を決定
-スマホGPS情報による交通弱者への安全支援研究等に拠出-
【No.18-043】
2019.02.21
一般社団法人日本損害保険協会(会長:西澤 敬二)は、2月21日(木)の当協会理事会において、各損害保険会社から拠出される自動車損害賠償責任保険の運用益を活用し、新規5事業を含めた38事業に対する総額18億5,417万円の支援を決定しました。
当協会では、1971(昭和46)年から、同運用益を活用した自動車事故防止対策事業や被害者対策事業などの多様な分野に対する支援を行っています。2019年度の支援では、自動車事故被害者対策を中心に取り組むとともに、昨今の交通環境の変化を踏まえて、スマートフォンを活用した事故防止対策など新しい分野へも積極的に拠出することを基本方針としています。
1.2019年度「自賠責運用益拠出事業」概要
- (1)自動車事故防止対策
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交通事故防止のための啓発・教育、交通事故防止機器の寄贈、交通事故防止に関する研究
- (2)救急医療体制の整備
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救命救急医療機器・機材の寄贈、救急医師・救急看護師の育成、ドクターヘリ事業の推進
- (3)自動車事故被害者対策
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交通事故相談等への支援、交通遺児への支援、被害者・家族等の心のケア、講習会の支援、研究支援
- (4)後遺障害認定対策
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公募による研究助成
- (5)医療費支払適正化対策
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医療費支払適正化の取組み
2.自動車事故防止対策
(1)スマートフォンを利用した個人交通事故リスク算出と行動改善に関する研究(事業主体:名古屋大学)<新規事業>
・本事業では、スマートフォンを利用してGPS情報による個人の移動履歴を収集し、警察庁等が整備している交通事故統計情報と組み合わせて分析することで、個人の交通行動に基づく事故リスクに関する調査研究を実施します。
・従来から交通安全対策がとられてきた自動車運転者だけでなく、歩行者・自転車運転者などの「交通弱者」への安全支援に資することが期待されます。
(2)地域密着型交通安全教育の方策開発と普及活動支援
(事業主体:NPO法人 安全と安心 心のまなびば)<新規事業>
・本事業では、地域に根差した交通安全活動を全国に向けて発信するため、過去の助成事業で実践した経験と結果を活用し、町内会や学区、家庭等の「小さな単位」における交通安全教室の定型化・マニュアル化を実施します。
・少人数による「個への教育」に着目し、各地域において全員参加・体験型の交通安全教育等を実施することで、各個人でのきめ細かい交通安全意識の教育・定着や地域の活性化を図るとともに、成功例をマニュアル化し、モデル事業として全国へ発信することを目指します。
3.自動車事故被害者対策
(1)脊髄損傷の再生医療に関する勉強会開催費用補助
(事業主体:NPO法人 日本せきずい基金)
・本事業では、脊髄損傷の原因の多くが交通事故であることを受け、脊髄損傷治療における再生医療に関する勉強会(再生医療に関する最新情報を提供する場としてのシンポジウム等)の開催費用を補助します。
・脊髄再生医療分野では、慶応大の「iPS細胞から神経のもとになる細胞を作り、脊髄損傷の患者へ移植する世界初の臨床研究」計画が、2019年2月、厚生労働省に承認されました。損保業界では、交通事故の被害者救済といった面からも極めて社会的意義の高い価値ある研究と捉え、基礎的研究の段階であった2001年度から2006年度の6年間に渡り「自賠責運用益拠出事業」として研究委託・支援を行い、この世界初の臨床研究に大きく貢献することができました。2019年度も、脊髄再生医療分野に関する予算を増額し、引き続き支援を強化します。
その他事業については、別紙の「自賠責運用益拠出事業一覧」をご参照ください。
ご参考:「自賠責運用益拠出事業」について
・自賠責保険は交通事故被害者への損害賠償という保険本来の役割だけでなく、被害者保護という目的のために、交通事故防止や救急医療体制の充実、被害者やその家族の支援事業などを支えるという役割も担っており、こうした事業を行うために、自賠責運用益が活用されています。
・自賠責運用益の使途は、将来の自賠責保険の収支改善のための財源とするほか、自動車事故防止対策、救急医療体制の整備、自動車事故被害者対策等に必要な費用など、被害者保護の増進に資する施策に活用できるとされています(自賠法第28条の3)。
・当協会では、各損害保険会社からの運用益の拠出を受け、真に被害者の支援となる事業を心がけ、「自賠責運用益拠出事業」の運営を行っております。