協会長ステートメント
会長 西澤 敬二

 協会長に就任して約9ヵ月が経過しようとしています。昨年12月の定例会見以降の主な活動や出来事につきまして、ご報告するとともに所感を申し上げます。

1.はじめに

 平成が幕を閉じようとしていますが、この30年間を振り返ってみますと、損害保険業界においては、規制緩和・自由化が進み、業界再編や事業領域の拡大、グローバル化の進展、デジタル技術の進化に伴う産業構造や消費者行動の変化など、業界を取り巻く事業環境は大きく変わりました。

 また、雲仙普賢岳の噴火、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震、そして、昨年の地震や台風・豪雨災害など、多くの自然災害が発生しました。損害保険業界では、度重なる自然災害において、迅速な保険金のお支払いに取り組むことで、被災された方々の生活再建や被災地の復旧・復興に全力で対応してまいりました。

 近年、自然災害のリスクは、かつてないほどに高まっており、損害保険業界には、リスク管理の一層の高度化に加え、防災・減災に資する取組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献していくことが求められています。

 当協会では、これまでに蓄積してきた確かな知見を土台として、損害保険に携わる者としての使命感や矜持を持ちながら、様々な環境変化に着実に対応し、企業活動や国民生活の安全・安心に資する商品やサービスを提供していくことで、今後も日本経済・社会を支える重要な社会インフラとしての役割をしっかりと果たしてまいりたいと考えています 。

2.これまでの取組みについて

(1)SDGs達成への貢献に向けた取組み

ア.SDGsフォーラムの開催

 当協会は、1月23日に、一般社団法人生命保険協会と共同で「SDGsフォーラム」を開催しました。当日は約440名の参加があり、SDGsの達成に向けて保険業界が果たすべき役割を再確認しました。これまでも損害保険業界は、リスクを取り扱う事業の特徴を活かした様々な活動を展開してきており、本フォーラムの開催を契機として、業界の枠組みを超えたパートナーシップを活性化させることで、その取組みを更に発展させてまいります。

イ.自然災害に対する取組み

(ア)ぼうさい探検隊の取組み

 当協会は、1月26日に、第15回「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」の記念式典・表彰式を開催しました。第15回という節目の年を迎え、受賞された児童の皆さまや教育機関・団体の関係者の方々など175名の参加者とともに、ビデオや記念誌で15年の軌跡を振り返りつつ、「未来への宣言」を発信しました。

 今回で、第1回からの参加児童者数は延べ約18万5千人となりましたが、今後も、当協会は、本取組みをさらに発展させていくことで、安心・安全なまちづくりに貢献してまいります 。

(イ)防災・減災に向けた取組み

 3月2日から2日間にかけて、大阪府の万博記念公園で開催された「アウトドアフェス」において、当協会は、災害への対策と地震保険の周知・啓発を目的とする、体験型のイベント「地震の備え 謎解きアトラクション」やパネル展示、映像放映などを実施しました。また、2月9日には、防災特別番組を放映するなど、防災教育や地震保険の普及・啓発に取り組みました。今後も、当協会は、各地域の特性を踏まえつつ、気象庁や自治体等と連携した防災・減災の啓発活動に取組み、地域防災力の向上に貢献してまいります。

(2)Society5.0実現への貢献に向けた取組み

ア.自動運転技術の進展に関する取組み

 自動運転車の社会的受容性の向上が求められる中、当協会では、「自動運転に関する特設ページ」を当協会のホームページ上に開設し、一般社団法人日本損害保険代理業協会と連携した啓発活動に取り組んでいます。また、事故時の原因分析やデータ記録装置のあり方について調査研究を進めるとともに、各種パブリックコメント等を通じた要望・提言や関係する省庁や団体等との意見交換を継続的に実施しています。今後も、法制度や各種ルールにおける課題に対し、関係者との対話を重ね、実効性のある対策を検討・発信していくことで、安心・安全な自動運転社会の実現に貢献してまいります。

イ.サイバーリスクの理解促進とサイバーレジリエンスの強化等ニューリスクに関する取組み

 当協会では、企業のサイバーリスクへの対応状況やサイバー保険の認知・加入状況等の把握を目的に、12月から1月にかけてアンケート調査を実施し、その結果を3月11日に公表しました。アンケート結果によると、60%以上の企業が、自社がサイバー攻撃の対象になる可能性があることを認識しておらず、特に、企業規模が小さいほどサイバーリスクに対する危機認識が低く、対策も遅れている傾向にあることが分かりました。本調査結果を活用し、引き続き、企業のサイバーセキュリティ強化に資する取組みを進めてまいります。

ウ.業界内の業務共通化・標準化・効率化に向けた取組み

 当協会では、お客さまの利便性向上や代理店・保険会社の業務効率化に向けて、新技術の活用を含めた幅広い検討を進めてまいりましたが、このたび、実現可能性と効果の観点から「優先的に検討を深める領域」を絞り込み、実現に向けた具体的な検討を進めていくことといたしました。

(3)各種課題への取組み

ア.自動車盗難防止に関する取組み

 2月7日に警察庁より公表された2018年の自動車盗難認知件数は8,628件となり、59年ぶりに年間1万件を下回りました。当協会は、警察庁など4省庁と19の民間団体で構成する「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」に参画し、自動車の盗難防止に取り組んでまいりましたが、今後も民間側事務局として、主体的な活動を行ってまいります。

イ.国際基準等への適切な対応

 当協会は、保険監督者国際機構(IAIS)による国際保険監督基準の策定に関する議論において、「再建計画策定に関する文書案」および「保険セクターのシステミックリスクに対する包括的枠組みに係る文書案」に対し、公平な競争条件の確保や過度な制約の回避等の観点から、それぞれ12月27日と1月24日に意見を提出しました。引き続き、損害保険市場がグローバルで健全に発展できるよう、建設的な意見発信に努めてまいります。

ウ.新興国市場への各種支援の取組み

 当協会は、アジア各国に対する損害保険市場の発展に向けた支援の一環として、1月24日に来日したミャンマー計画・財務省の職員に対して保険募集・教育制度分野に関する研修を実施しました。また、3月4日から2日間にかけて、ミャンマー・ネピドーで開催された「アジアにおけるOECD保険・退職貯蓄ラウンドテーブル」に参加し、わが国における昨今の自然災害への対応を踏まえつつ、保険会社におけるリスク管理の高度化の必要性等について講演を行いました。その他、モンゴル保険協会との協力覚書に基づき、自動車保険損害調査の制度改善に関する支援を行いました。今後も、あらゆる機会をとらえた取組みを継続し、アジア各国の損害保険市場の健全な発展に貢献してまいります。

3.おわりに

  世界経済の先行きに不透明感が増しており、また、デジタル技術の進化が様々な産業の構造変化をもたらすなど、個人や企業を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。当協会では、昨年4月より、「SDGs達成への貢献」と「Society5.0実現への貢献」という2つの観点から「第8次中期基本計画」を推進してまいりましたが、今後も、変化が生み出す新たなリスクにしっかりと対応していくことで、安心・安全で持続可能な日本の未来に貢献してまいります。
 引き続き、皆さまのご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

2019年3月 協会長ステートメント(PDF)

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