協会長ステートメント
会長 金杉 恭三

 9月の定例会見以降、これまでの主な取組みにつきまして、ご報告と所感を申し上げます。

1.はじめに

 相次ぐ自然災害で、お亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、ご遺族および被害を受けられた皆さまに、心からお見舞い申し上げます。

 損害保険業界といたしましては、被害に遭われた皆さまからのご相談に親身に対応するとともに、迅速かつ適切に保険金をお支払いするよう業界一丸となって取り組んでおります。12月9日現在、台風15号と台風19号等の各社において事故受付をした事案の保険金支払見込額の合計は、7,464億円となっており、被災された皆さまへ順次保険金をお届けしているところです。

2.自然災害に対する取組み

(1)今般の自然災害に対する取組み

 当協会では、台風15号および台風19号等による災害の対応に万全を期すため、「2019年度自然災害対策本部」を設置し、消費者や会員各社に対して次の取組みを行っております。

 まず、消費者に対しては、災害救助法が適用された地域で被害を受けられた場合、継続契約の締結手続きおよび保険料の払い込みを6か月間猶予する特別措置を実施しております。また、損害保険に関わる相談や苦情の受付窓口のほか、契約する保険会社が分からない場合は「自然災害等損保契約照会センター」で対応を行っております。

 さらに、行政と連携し保険会社の相談・事故のご連絡先の窓口を記載した情報提供チラシを避難所に掲示、配布するとともに、協会HPや新聞広告の活用によって、当協会の取組みと会員各社の照会窓口についてお知らせしております。また、悪質な住宅修理業者とのトラブルを回避する観点から、国民生活センター等と連携した注意喚起も行っております。

 次に、会員各社に対しては、被災により保険金請求手続きを円滑に行うことが困難なご契約者がいらっしゃることを想定して、保険金請求手続きを勧奨する活動を行うよう要請しております。

 会員各社では、本社および現地に対策本部を設置し、コールセンター等の人員の増員による事故受付体制の強化や代理店とともに被災地にお住まいの契約者等に請求勧奨を行う等の対応を行っております。この他、インターネットによる事故受付サービス、手続書類のデジタル化・ペーパレス化、RPA活用による業務効率化、AI、ドローンや人工衛星の画像の活用による損害調査等を実施し、迅速かつ適切な保険金の支払いに努めております。

(2)中期的な課題

 2年連続で多発した大規模な自然災害によって、我が国が災害大国であり、常態化した自然災害に対して、従来までの取組みの一層の強化と新たな課題への対応が必要であることを改めて認識いたしました。当協会においては、新たにプロジェクトチームを組成し一連の災害で得られた経験や気づきを今後の自然災害への対応に活かすための検討を行ってまいります。また、損害保険業界が引き続き財務の健全性を維持・確保するために必要不可欠な異常危険準備金については、今後、税制面についてその在り方も含め抜本的な見直しを検討の上、関係各方面に働きかけてまいりたいと考えております。

(3)自然災害リスクに関する啓発取組み

1.防災イベントによる啓発取組み

 当協会は、10月19日・20日に開催された、内閣府等主催の総合防災イベント「ぼうさいこくたい2019」に参画し、緊急セッション「台風災害緊急情報共有の会」において、台風15号・台風19号への当協会の対応について説明するとともに、産官学の主要団体と意見交換を行いました。また、「南海トラフ地震」への対策と備えをテーマとしたパネルディスカッションを主催し、災害に強いまちづくりや防災教育、地震保険の重要性について啓発活動を行いました。

2.児童向けの防災教育取組み

 当協会は、子どもの防災意識の向上のため、まちの防災・防犯・交通安全をテーマにマップにまとめる「ぼうさい探検隊」の取組みを実施しており、2004年度から「ぼうさい探検隊マップコンクール」を開催しています。第16回となる今年度は、全国47都道府県の小学校や児童館・子ども会・消防少年団など16,492人の児童が参加し、過去最高となる594団体から応募がありました。尚、作品数としては、2,541作品の応募がありました。この中から、入賞作品を決定し、来年1月25日に表彰式を行う予定です。

3.地震保険の普及に向けた取組み

 当協会では、地震保険の普及に向け、テレビCM、新聞やインターネット広告を通じた広報活動を行い、地震リスクや地震保険加入の必要性について消費者の理解促進に努めております。12月26日には、「巨大地震があなたを襲う ~命と暮らしをどう守る~」と題し、南海トラフ地震のシミュレーションと地震保険の概要を紹介する特別番組を提供し、発生が予想される大地震への備えの重要性について訴求いたします。

3.高齢者・外国人に向けた取組み

(1)高齢者向けの取組み

 当協会では、高齢者が当事者となる交通事故の防止のため、各地域の警察や自治体と連携した交通安全イベントを展開しております。11月16日には高齢ドライバー向けのイベントとして「安全運転フォーラムin埼玉」を開催し、車両の先進安全技術や自動運転についての有識者講演に加え、安全運転サポート車(サポカー)の実車体験を行いました。引き続き、安全運転に関する啓発活動を行うとともに、高齢運転者の事故防止および被害軽減のため、サポカーの利用についても呼びかけてまいります。

(2)外国人向けの取組み

 災害時の情報提供サイトの周知と外国人の事故防止のため、外国人の方が起こしやすいとされる交通事故などへの注意喚起を盛り込んだチラシをリリースいたしました。また、増加する外国人観光客のシェアサイクル・レンタサイクル利用時の事故トラブルを防ぐため、日本国内での自転車利用時のルールとマナーを記載したリーフレット「CYCLING MAP & RULES IN TOKYO」の提供も行いました。引き続き、来年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けて、外国人の方が滞在しやすい環境づくりに努めてまいります。

4.各種課題への取組み

(1)自動運転等に関する取組み

 当協会では、「自動運転に関する特設ページ」をホームページ上に開設し情報提供を行っております。9月30日に自動運転技術の最新情報を掲載したほか、相次ぐ高齢ドライバーによる事故を受け、安全運転支援システム搭載車の利用について、よくあるご質問を追加いたしました。引き続き、最新の情報発信を通じて、安心・安全な自動運転社会の実現に貢献してまいります。

(2)サイバーリスクに関する取組み

 サイバーリスクへの理解とサイバー保険の活用を促すため、11月1日にサイバー攻撃が企業に与える影響やサイバー保険によって補償される内容など、保険による備えの有効性を訴求する動画「サイバーリスクと保険による備え」をリリースいたしました。引き続き、啓発イベントやマスコミへの情報提供を通じ、サイバーリスクに対する啓発とサイバー保険の加入促進を行ってまいります。

(3)軽消防自動車・高規格救急車の寄贈

 当協会は、1952年度から地域防災力の強化や、救急医療体制の整備を目的として、全国各地の自治体へ、軽消防自動車と高規格救急自動車を寄贈しています。今年度は、離島を含む全国各地に21台を寄贈し、累計の寄贈台数はこれまで5,129台となりました。寄贈した軽消防自動車と高規格救急自動車は、消火活動や救急救命活動のほか、住民の防災意識向上のための消防訓練などに活用されています。

(4)国際基準などに関する取組み

 11月14日にアブダビで開催された保険監督者国際機構(IAIS)年次総会において、「国際的に活動する保険グループ(IAIGs)の監督のための共通の枠組み(ComFrame)」を中心とした各種国際基準等が採択されました。今後は、我が国における国際基準等に基づく国内法制度の整備に向けた検討において、適時適切な意見表明を行ってまいります。

(5)アジア各国・地域の損害保険市場に関する取組み

 当協会は、タイ損害保険協会との一層の関係強化のため、10月7日に協力覚書を締結しました。今後、当協会とタイ損害保険協会は、セミナーや各種意見交換等を通じた専門性・経験の共有、提言、相互訪問などにより、両国の保険市場の発展、経済・国民生活の向上につながる取組みを進めてまいります。また、11月には、昨年協力覚書を締結したASEAN加盟10か国の保険協会で構成されるASEAN保険会議の年次会合に参加し、保険募集の専門性向上に向けた提言を行いました。

3.おわりに

 今年度は、就任時に掲げた「自然災害に対する取組み」と「高齢者・外国人向けの取組み」の2つの重点課題を中心に取り組んでまいりましたが、この3ヶ月間は、自然災害への対応に注力することとなりました。

 私自身が台風19号の被災地である福島県と長野県を訪問した際には、報道を通じて想像していた以上の甚大な被害を目の当たりにし言葉を失いました。翻って、損保協会会長としては、今こそ損保業界の使命を果たし、迅速かつ適切に保険金をお支払いすることによって、被災された方の生活再建のお役に立ちたい、との強い想いをいだきました。被災地の一日も早い復興のため、業界の先頭に立ち、会員各社とともに力を尽くしてまいる所存であります。

 また、度重なる大規模自然災害の発生を踏まえると、常態化した自然災害への、更なる対応を「ALL JAPAN」で考え、強靭な日本を創っていく必要があると考えております。損保業界としましては、先に述べた中期的な課題に取り組むとともに、従来までの各地域の実情に応じた防災・減災の取組みを強化し、「自助」、「共助」、「公助」の3つを組み合せた取組みの重要性について啓発活動を行ってまいりたいと考えております。

 さて、来年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。損保業界としては、万が一の災害時にも外国人の方が安心・安全に滞在できる環境の整備やサイバー攻撃のリスクに対する啓発活動を行うなど、国際的なイベントにも貢献してまいりたいと考えております。

 引き続き、SDGs達成への貢献、Society5.0実現への貢献という2つの観点を踏まえ、第8次中期基本計画を着実に推進し、「安心かつ安全で持続可能な社会の実現」と「経済および国民生活の安定と向上」という社会的使命を果たしてまいります。

 皆さまのご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

以 上

2019年12月 協会長ステートメント(PDF)

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